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連載 「あなたにもできる介護起業」
全国訪問介護協議会会長の荒井信雄さんによる介護起業指南をお伝えします。

第6回 介護起業成功例 その1

~参入3年目にして年商1億円を実現~
2011年10月20日
これまでお読みいただいてきた読者の皆様には、
「介護市場が成長分野であり拡大市場であることはわかった。介護サービス事業のうち訪問介護事業が小リスクであることも理解した。会社経営の醍醐味も認識したうえで、起業支援を受ければ本当に成功する可能性があるのか。」
という不安の声が当然あるでしょう。そこで、成功実例として2人の事業者をご紹介いたします。

 まったくの異業種から参入
 まずは、介護業界未経験者で参入3年目にして年商1億円を実現したWケアのS社長です。S社長からは「これまで介護サービス事業に携わった経験はないが、確実に市場が拡大していくこのマーケットに参入したい。ついては介護事業の開設方法、具体的な事業の運営方法、そして成功する方法まで、すべてを教えてほしい」という相談を受けました。

 Sさんの前職は石油会社の社員。確かに介護とは別畑。まったく異なる業種です。そこからいかにして、事業を立ち上げ、軌道に乗せられるか。コンサルタントとしては、起業に関わる全てをフルサポートしていくわけです。

 拠点を決定し営業スタート!
 まず、営業拠点を設置する場所に関して、Sさんは、S区とK区のどちらで開業すべきか迷っていました。そこで、市場調査を実施したところ、K区のほうがS区に比べ要介護認定者数の居住者が多いことがわかりました。

 また、介護度2の認定者が多く、介護事業者にとって有利な状況、客単価の高い利用者の獲得が期待できる可能性の高いエリアと考えられました。競合も存在しますが、経営状態は好調。しかもその会社は大手ではないので、今後のマーケット開拓の余地は未だ大きいという状況が判明しました。

 そしてK区に拠点を設置し、営業をスタート。市場調査の結果どおり、顧客獲得は比較的順調に進みました。ただ、すぐに介護業界ならではの難しさに直面します。

 介護業界ならではの難しさに直面
 訪問介護事業では、売り上げを伸ばしたくても、必要な資格を有したスタッフを増やしていくことができないと、拡大戦略が打てないのです。当然ながら、多くの顧客を獲得し、売り上げを伸ばすために、スタッフ雇用は積極的に行う必要があるのです。

 同社もスタッフ雇用という問題に直面しました。介護スタッフが不足しサービス供給が予定どおりに進まず、新規顧客を獲得できないという状況に落ち入ったのです。これは、なかなか売り上げが挙がらない経営状態の中、経費削減のために求人広告の経費削減を行ったことが原因でした。

 介護スタッフの採用にかける資金は、経費ではなく投資です。より的確な投資とするために、介護スタッフが1人増加すると、どれだけの売り上げ増加につながるかについて、緻密なシミュレーションを行い、広告の出稿頻度を適切なラインまで増加させていくことで問題をクリアしていきました。

 問題を乗り越え、参入3年目にして年商1億円
 まったくの未経験からスタートした訪問介護ビジネスでしたが、利用者数は3年目に約200人を超え、売り上げも年商1億円を超えました。正社員11名、パート81名の従業員を抱え、サービス提供エリアもK区から、S区、I区まで広がっています。

 そして4年目となる現在は、三つの事業所を展開し、さらに四番目の事業所開設準備に取りかかっております。今年度の年商見込みも2億円をこえ、ヘルパー養成学校経営にものりだし、数年後にはサービス付高齢者住宅に参入する計画とのことです。地域密着型・介護サービスの要とも言えるポジションを確実に築きつつあります。

 Sさんからは「荒井さんのおかげで順調な経営を続けることができています。本当にありがとうございます。実際にマーケティング調査にも同行いただき、そこで聞いたこと、感じたことすべてが実際の経営に役立っています」と、感謝の言葉をいただいています。

 これからもコンサルタントとして、同社の成長に貢献していきたいと思っています。まだSさんは若手経営者、長いお付き合いができそうです。


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荒井 信雄 (あらい のぶお)
株式会社さくらケア代表取締役社長。
全国訪問介護協議会会長。
大学卒業後、アパレル企業、大手介護企業を経て、株式会社さくらケアを起業。さくらケア上町居宅介護支援・訪問介護事務所などを運営するほか、訪問介護企業支援、訪問介護収益改善支援、訪問介護M&A支援にもあたる。著書に『今しかできない介護起業』(税務経理協会、共著)、『訪問介護事業・居宅介護支援事業成功の法則』(税務経理協会)。

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