特集

特別企画 「震災と社会福祉士」
東日本大震災において、社会福祉士が手がけたことなどについて随時リポートしていきます。

第14回 仮設住宅での支援活動

2012年4月17日
 3月11日の東日本大震災から早くも1年が経過しました。被災地のがれきは一部を除いてほとんど処理された地域もありますが、その風景がかえって住民に何もなくなってしまった思いをより深くさせている側面もあるようです。被災された方の中には海を見ると胸が苦しくなると訴える方もおられ、物理的にも精神的にも被災地の復興にはまだまだ時間が必要なのだと感じさせられます。

 私は、東日本大震災ルーテル教会救援というボランティア団体に所属し、石巻市の仮設住宅支援に当たっていました。12月1日から活動を開始し、当初はどのようなことから始めたらよいか見当がつきませんでしたが、まずは仮設住宅の集会所を使って“お茶のみサロン”を開催することになりました。

 石巻市内の仮設住宅では、様々なボランティア団体が、集会所でのサロン活動に携わっていますが、その活動内容は団体により多少異なります。実際の活動では専門性を強調することは全くないのですが、単にお茶をいただくだけで終わってしまってはソーシャルワーカーが関わる意味が半減してしまうので、プログラムに工夫が必要であると考えました。

 私自身、楽器演奏など特技は何もありません。しかし、そのような言い訳は通用しないので、まずは簡単な体操をプログラムのメインに据えてサロンを開催することにしました。

 仮設住宅の高齢者人口の割合は高いと聞いていたことや、私の個人的な理由(仙台から石巻に通うことや、勤務時間など)により日中しか開催できないため、参加者層としては70歳以上を想定していましたが、始めてみると、場所によっては、60歳代の方が中心となるケースもありました。

 出身地域が固まっている仮設住宅は人間関係ができていますが、そうでない場合は同じ仮設住宅に住む住民同士でも当初からの面識がある訳ではありません。そのため、心がけたのは参加者同士の交流です。できるだけウォーミングアップの時間を設け、「好きな食べ物」などの話しやすいテーマを決めて、参加者一人一人にお話をしていただいています。こうすることで、無口な方の声も聞けたり、一人の発言から参加者同士の交流が深まる会話が生まれたりと、コミュニケーションが深まる、大切なひとときになることができたのではないかと思います。

 参加者の中にはいうまでもなく津波で肉親を失った方も多く、あえて津波の話題を引出すようなことは避けていますが、どのような話題を振っても結果的には津波の話となってしまうことも多くありました。
 たとえば「好きなものは鍋料理です。いつも養殖したかきやほたてを家族の食べる分だけ海から取ってきて鍋に入れていました。今はそれができないので残念です」とお話しされます。

 また、なにかにつけ「津波で記憶も流されてしまった」とおっしゃる声をよく聴きました。サロンでは、ご本人の口から自然に出てきたお話はそのまま受け止め、津波で大変は思いをされたことをできる限り受け止めるようにと、努めています。悲しい思いを引きずったままでサロンを終えることのないように…といつも心がけていました。

 様々な方々に参加いただいているサロンではありますが、仮設住宅に限らず、サロンの参加者も圧倒的に女性が多いのが特徴的でした。

 私たちも孤立しがちな男性の参加者を増やそうとしているものの、なかなか思うようにいかないのが現状でした。
 また、新規参加者がなかなか増えないのも課題でした。特に高齢者だけを想定しているわけではないので、もう少し50歳代の若い世代も参加され、その中から将来的にはサロンの運営に関わり、ゆくゆくは運営を担ってくださる方が現れることなどが期待されます。


 残念ながら私は家庭の事情による引越しで、現在は直接的な被災地支援から退くことになりましたが、今後も、被災地におけるソーシャルワークについて幅広く考えて活動していきたいと思っています。


一般社団法人成年後見事務所アンカー
東日本大震災ルーテル教会救援
西田ちゆき

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