特集

平成30年度介護保険制度改正
「介護保険制度改正」は、3年間隔で制度内容を見直すこととされており、次の制度改正は平成30年度に予定されています。wel.ne.jpでは平成30年度介護保険制度改正の見直し内容などの特集記事を随時、掲載していきます。

第2回 介護保険制度の見直しに関する意見について(その2)

5. まとめ、参考資料
2017年3月15日
介護保険制度改正の見直しに関する意見について、「地域包括ケアシステムの深化・推進」と「介護保険制度の持続可能性の確保」「その他の課題」に分けて整理されており、今回の特集記事では「介護保険制度の持続可能性の確保」と「その他の課題」に関する内容を特集記事として掲載しました。

「介護保険制度の持続可能性の確保」と「その他の課題」の取組みについて、主な意見として以下の内容が示されています。

1.利用者負担のあり方
  • 現役並み所得者の負担割合を「3割負担」、住民税課税者の負担限度額を「44,400円」に引き上げる。

2.給付のあり方
  • 要介護度が軽度(要介護1、要介護2)者の地域支援事業への移行は今後の検討課題とする。ただし、生活援助を中心としたサービス提供を行う場合の人員基準は、平成30年度介護報酬改定時に検討する。

  • 福祉用具貸与の全国平均貸与額を公表する。また、適切な福祉用具貸与価格を確保するために、上限額を設定する。

  • 国が住宅改修の見積もり書類の様式(改修内容、材料費、施工費等の内訳が把握できるもの)を提示する。

3.給付費用負担
  • 第2号被保険者の介護保険料について、総報酬割を導入する。

  • 調整交付金の年齢区分について、「65~74歳」「75~84歳」「85歳以上」の3区分に細分化する。

4.その他の課題
  • 市町村の事務負担軽減のため、更新申請者の有効期間上限を36ヶ月に延長することを可能とする。また、状態が安定している人の二次判定手続きを簡素化する。

  • 被保険者範囲の拡大は、介護保険を取り巻く状況の変化も踏まえて、今後の検討課題とする。

  • 介護保険適用除外施設から退所した場合、介護保険適用除外施設に入所する前の市町村が介護保険者とみなす。

最後に


平成30年度介護保険制度改正に向け、社会保障審議会・介護保険部会において、様々なテーマで検討が行われた結果を2回の特集記事で紹介しました。

平成12年4月に介護保険制度開始後、介護保険サービスの利用者が制度創設時の約3倍(500万人)を超え、介護保険サービス利用者数の増加に応じて、介護サービス提供事業者数も着実に増え、介護保険制度は介護が必要な高齢者の生活の支えとして定着、発展しています。


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第57回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年4月22日開催)
「参考資料1 保険者等による地域分析と対応(参考資料)」から転載


その一方、介護費用は増加の一途を辿り(制度創設時から約3倍(10兆円))、65歳以上の方が支払う介護保険料(1ヶ月)の全国平均額も制度創設時は3,000円を下回っていたものが、現在は5,000円を超え、2025年度(平成37年度)には、8,000円を超えることが見込まれています。40歳~64歳以下の方が負担する保険料についても、大幅に増加しており、その傾向は続くことが予測されます。


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第57回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年4月22日開催)
「参考資料1 保険者等による地域分析と対応(参考資料)」から転載


さらに、2025年(平成37年)には団塊世代の全てが75歳以上となるほか、2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上になるなど、人口の高齢化は更に進展します。


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第57回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年4月22日開催)
「参考資料1 保険者等による地域分析と対応(参考資料)」から転載


また、「75歳以上人口の増加率」「要介護認定率」「一人当たりの介護費用」「施設サービスと居宅サービスの割合」等について、市町村による地域差が生じています。


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第57回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年4月22日開催)
「参考資料1 保険者等による地域分析と対応(参考資料)」から転載



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第57回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年4月22日開催)
「参考資料1 保険者等による地域分析と対応(参考資料)」から転載


介護保険サービスを支える介護職員の人材も確保する必要があり、2020年代当初における介護人材の需給ギャップを解消するため、約25万人の人材を確保するための対策が進められています。


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第63回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年9月7日開催)
「参考資料1 介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)(参考資料)」から転載


このように介護保険制度を取り巻く状況が大きく変化している中で、団塊世代が75歳以上となる2025年(平成37年)や団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者数がピークを迎える2040年(平成52年)も見据えて、今後も介護保険制が維持できるようにすることが重要となります。

介護保険制度を今後も継続することができるようにするために、以下の意見が示されています。

<介護保険制度の維持に向けた主な意見>
  • 質の高いサービスを提供することや財源と人材をより重点的・効率的に活用する仕組みを構築することで介護給付費の伸びを抑制する。

  • 利用者負担のあり方や保険料のあり方について、世代内・世代間の公平等を踏まえた見直しに取り組む。

  • 国と都道府県が一体となって支えつつ、介護保険の保険者である市町村の保険者機能を強化していく。


上記の内容を踏まえて、平成28年2月から16回に亘って社会保障審議会・介護保険部会で検討が重ねられ、平成28年12月9日に「介護保険制度改正の見直しに関する意見」が提示されました。

また、社会保障審議会・介護保険部会の検討内容等を踏まえて、平成29年2月7日に平成30年度介護保険改正内容の法律案(地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案)が国会に提示されています。

参考サイト
地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案
(平成29年2月7日提出)


平成30年度介護保険改正内容について、平成29年8月に第2号被保険者の介護保険料の見直し(総報酬割)が予定されており、それ以外の改正内容は、平成30年4月1日と平成30年8月1日に分けて施行される見込みです。

平成30年度介護保険制度改正について、被保険者にとっては、高所得者に対する利用者負担や第2号被保険者の保険料の見直しについて、特に影響があります。

介護保険事業者においては、居宅介護支援事業者の運営基準の見直しや障がい者の方が介護保険の被保険者となった際に、継続して必要なサービスが受けられるサービス(共生型)が追加される予定であるため、どのような改正となるのか確認する必要があります。

市町村においては、平成30年度介護保険制度改正内容を踏まえて、第7期介護保険事業計画(平成30年~32年度)への検討を進めていくことになります。

当記事は平成28年12月9日まで開催された社会保障審議会・介護保険部会に提示された情報を基に作成をしています。

今後、平成29年3月10日に開催される全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議の内容等を踏まえて、平成29年4月以降に平成30年度介護保険制度改正の詳細内容を解説した特集記事を掲載する予定です。

添付


第57回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年4月22日開催)
参考資料1 保険者等による地域分析と対応(参考資料) - PDFファイル

第59回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年6月3日開催)
参考資料3 介護保険適用除外施設における住所地特例の見直しについて(参考資料) - PDFファイル

第61回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年8月19日開催)
参考資料2 費用負担(総報酬割・調整交付金等)(参考資料) - PDFファイル

第63回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年9月7日開催)
参考資料1 介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)(参考資料) - PDFファイル
参考資料2 保険者の業務簡素化(要介護認定等)(参考資料) - PDFファイル

第66回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年10月12日開催)
参考資料1 軽度者への支援のあり方(参考資料) - PDFファイル
参考資料2 福祉用具・住宅改修(参考資料) - PDFファイル

第67回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年10月19日開催)
参考資料1 利用者負担(参考資料) - PDFファイル
参考資料2 費用負担(参考資料) - PDFファイル

第70回社会保障審議会・介護保険部会(平成28年12月9日開催)
資料1 介護保険制度の見直しに関する意見(案) - PDFファイル

厚生労働省HP
介護予防・日常生活支援総合事業の基本的考え方 - PDFファイル

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