「特集記事:第1回 平成27年度介護保険制度の改正内容について」
当特集記事では、特に介護保険サービス利用者、介護保険サービス事業者、市町村等に影響の大きい改正内容を中心に、「平成27年度介護保険制度改正」の詳細内容を解説していきます。
今回は、全国介護保険担当課長会議(平成26年11月10日)で提示された資料を基に、一定以上所得者の利用者負担の見直しに関する内容を解説します。
全国介護保険担当課長会議(平成26年11月10日)のリンク先)
4.一定以上所得者の負担割合の見直しについて
一定以上所得者の利用者負担の見直しに関する概要
平成12年の介護保険制度創設以来、被保険者の所得状況に関わらず、介護保険の「利用者負担割合」は1割とされており、「負担限度額」も据え置かれていました。(この間、高齢者の医療制度では「利用者負担割合」や「負担限度額」の引き上げが行われています。)
しかし、団塊の世代が75歳以上となる2025年(平成37年)には、介護保険料の平均額が現在の5,000円から8,200円程度に上昇することが見込まれており、「介護保険制度」の持続可能性のために、一定以上所得者に対する「利用者負担割合の見直し(1割負担が2割負担に引き上げ)」と「高額介護サービス費の負担限度額の見直し(負担限度額が37,200円から44,400円に引き上げ)」が実施されます。
利用者負担割合の見直し
平成27年8月から一定以上所得者の「利用者負担割合」が2割に引き上げられます。
以下に、「利用者負担割合」の見直しに関する内容を解説します。
2割負担該当者の基準
・1号被保険者のうち、上位20%に相当する所得基準(合計所得金額160万円以上(単身で年金収入のみの場合、280万円以上))を有している人。
ただし、合計所得金額が160万円以上であっても、実質的な所得が280万円に満たないケースや2人以上世帯における負担能力が低いケースについては、その負担能力を考慮し、「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が単身で280万円、2人以上世帯で346万円未満の場合は、1割負担に戻す。
ただし、合計所得金額が160万円以上であっても、実質的な所得が280万円に満たないケースや2人以上世帯における負担能力が低いケースについては、その負担能力を考慮し、「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が単身で280万円、2人以上世帯で346万円未満の場合は、1割負担に戻す。
2割負担該当者の考え方
・2割負担に該当する対象者は、上記基準以上の所得を有する本人のみとする。
同一世帯に他に介護サービスを利用する方がいても、その方自身の所得が基準以上でなければ、その方は2割負担の対象にはならない。
・2号被保険者は、上記基準以上の所得を有していても、2割負担の対象にはならない。
同一世帯に他に介護サービスを利用する方がいても、その方自身の所得が基準以上でなければ、その方は2割負担の対象にはならない。
・2号被保険者は、上記基準以上の所得を有していても、2割負担の対象にはならない。
負担割合の変更があるケースとその場合の過誤調整方法
上記に記載した条件に該当する人が2割負担となりますが、住民税の所得更正や世帯員の転入出等によって、2割負担から1割負担の対象者へ変更されることがあります。
詳細な内容について、以下の資料に提示されています。
詳細な内容について、以下の資料に提示されています。
負担割合証
被保険者が介護保険サービス等を利用する際に、1割負担又は2割負担なのかを判別することができるように、「負担割合証」が交付されます。
「負担割合証」は、要介護/要支援/総合事業の認定を受けている全ての対象者に交付されます。
「負担割合証」の有効期間は1年間(当該年度の8月1日から翌年度の7月31日)とされています。
なお、初めて要介護等の申請を行い、認定された被保険者については、負担割合開始日に認定有効期間の開始日が設定されます。
2割負担適用期間の考え方は、以下のサイトに纏められています。
リンク先)
2割負担適用期間の考え方について
「負担割合証」の様式について、以下の案が示されています。
「負担割合証」は、要介護/要支援/総合事業の認定を受けている全ての対象者に交付されます。
「負担割合証」の有効期間は1年間(当該年度の8月1日から翌年度の7月31日)とされています。
なお、初めて要介護等の申請を行い、認定された被保険者については、負担割合開始日に認定有効期間の開始日が設定されます。
2割負担適用期間の考え方は、以下のサイトに纏められています。
リンク先)
2割負担適用期間の考え方について
「負担割合証」の様式について、以下の案が示されています。
その他留意事項
利用者負担割合の見直しに関するその他の留意事項等は以下の通りです。
・同一世帯に他に介護サービスを利用する方がいても、その方自身の所得が基準以上でなければ、その方は2割負担の対象にはならない。
・保険料滞納に伴う給付制限(給付額の減額措置)が行われている対象者の利用者負担は、現行と同様に3割負担とする。(保険料滞納に伴う給付制限(給付額の減額措置)に関する情報は「被保険者証」にしか印刷されないため、介護保険サービス事業者は「被保険者証」と「負担割合証」を基に対象者の負担割合を確認する必要がある。)
・海外から転入した者等前年所得が不明である場合は、1割負担とする。
・要介護(支援)認定を受けている被保険者が他市町村に転出する際、転入前市町村で「受給資格証明書」に1割負担又は2割負担なのかを記載し、転入先市町村において、負担割合の判定に活用する。
・同一世帯に他に介護サービスを利用する方がいても、その方自身の所得が基準以上でなければ、その方は2割負担の対象にはならない。
・保険料滞納に伴う給付制限(給付額の減額措置)が行われている対象者の利用者負担は、現行と同様に3割負担とする。(保険料滞納に伴う給付制限(給付額の減額措置)に関する情報は「被保険者証」にしか印刷されないため、介護保険サービス事業者は「被保険者証」と「負担割合証」を基に対象者の負担割合を確認する必要がある。)
・海外から転入した者等前年所得が不明である場合は、1割負担とする。
・要介護(支援)認定を受けている被保険者が他市町村に転出する際、転入前市町村で「受給資格証明書」に1割負担又は2割負担なのかを記載し、転入先市町村において、負担割合の判定に活用する。
高額介護サービス費の負担限度額の見直し
平成27年8月から同一世帯内に一定以上の所得者がいる場合、その世帯の負担限度額が44,400円に引き上げられます。
以下に、「高額介護サービス費の負担限度額」の見直しに関する内容を解説します。
高額介護サービス費の負担限度額が引き上げられる対象者の基準
・同一世帯内の1号被保険者に一定以上の所得者がいる場合、その世帯の負担限度額を44,400円とする。
・一定以上の所得者の基準(以下、現役並み所得相当と記載)は、高齢者医療制度と同様とし、課税所得が145万円以上とする。
・ただし、課税所得が145万円以上の場合でも、以下の条件に満たない場合、被保険者の申請により、「一般(37,200円)」の負担限度額に戻す。
<同一世帯内の1号被保険者収入条件>
・1人のみの場合:383万円に満たない場合、「一般(37,200円)」の負担限度額
・2人以上の場合:520万円に満たない場合、「一般(37,200円)」の負担限度額
・一定以上の所得者の基準(以下、現役並み所得相当と記載)は、高齢者医療制度と同様とし、課税所得が145万円以上とする。
・ただし、課税所得が145万円以上の場合でも、以下の条件に満たない場合、被保険者の申請により、「一般(37,200円)」の負担限度額に戻す。
<同一世帯内の1号被保険者収入条件>
・1人のみの場合:383万円に満たない場合、「一般(37,200円)」の負担限度額
・2人以上の場合:520万円に満たない場合、「一般(37,200円)」の負担限度額
現役並み所得者に対する勧奨通知の実施と申請の届け出
上記に記載している通り、同一世帯内の1号被保険者収入条件によって、「現役並み所得相当(44,400円)」ではなく「一般(37,200円)」の負担限度額に戻すことが可能とされています。
同一世帯内の1号被保険者収入情報について、市町村では網羅的に把握することができないため、本人の収入額申請に基づき、「現役並み所得相当(44,400円)」又は「一般(37,200円)」の判定を行います。
市町村は、「世帯内に課税所得が145万円以上の1号被保険者がいる人」かつ「世帯内に要介護(支援)認定を受けている人」に該当する対象者へ、7月頃に勧奨通知を行います。
ただし、年金収入額+その他の合計所得金額により、同一世帯内の1号被保険者収入が383万円(2人以上の場合は、520万円)以上となることが明らかな方については、勧奨通知を行わなくても良いこととされています。
勧奨通知が届いた対象者は、上記に記載した収入条件(同一世帯内の1号被保険者収入条件)に該当する場合、市町村に申請を行うことで、一般(37,200円)の負担限度額に戻すことが可能です。(申請があった月の翌月初日から一般(37,200円)の負担限度額に戻ります。)
同一世帯内の1号被保険者収入情報について、市町村では網羅的に把握することができないため、本人の収入額申請に基づき、「現役並み所得相当(44,400円)」又は「一般(37,200円)」の判定を行います。
市町村は、「世帯内に課税所得が145万円以上の1号被保険者がいる人」かつ「世帯内に要介護(支援)認定を受けている人」に該当する対象者へ、7月頃に勧奨通知を行います。
ただし、年金収入額+その他の合計所得金額により、同一世帯内の1号被保険者収入が383万円(2人以上の場合は、520万円)以上となることが明らかな方については、勧奨通知を行わなくても良いこととされています。
勧奨通知が届いた対象者は、上記に記載した収入条件(同一世帯内の1号被保険者収入条件)に該当する場合、市町村に申請を行うことで、一般(37,200円)の負担限度額に戻すことが可能です。(申請があった月の翌月初日から一般(37,200円)の負担限度額に戻ります。)
まとめ
平成12年の介護保険制度創設以来、変更が行われなかった「利用者負担割合」と「高額介護サービス費の負担限度額」について、平成27年8月から見直されます。
「利用者負担割合」について、1割負担の対象者と2割負担の対象者が判別できるように、「負担割合証」が発行されます。
介護保険サービス事業者は、「負担割合証」に記載されている「利用者負担割合」を基に、費用の徴収を行い、請求明細書の作成を行う必要があります。
介護保険サービス利用者は、介護保険サービス等を利用する場合、「負担割合証」を介護保険サービス事業者に提示する必要があります。
市町村は、利用者負担割合の見直しに伴い、以下の事務を新たに実施することになります。
利用者負担割合の判定事務
1号被保険者の所得情報及び世帯構成に基づき、利用者負担割合の判定事務を行う必要があります。
その際、必要な税情報を関連システムから入手する必要があります。
その際、必要な税情報を関連システムから入手する必要があります。
「負担割合証」の送付事務
「負担割合証」を被保険者へ送付する必要があります。
また、送付事務は主に「年次」「月次」「随時」のサイクルで実施されることが想定されます。
「年次」
新年度に前年度の所得情報を踏まえて、要介護/要支援/総合事業の認定を受けている全ての対象者に交付
「月次」
住民税の所得更正や世帯員の転入出等によって、所得要件が変更された対象者等に交付
「随時」
新たに要介護認定等を受けた対象者や転入者等に交付
また、送付事務は主に「年次」「月次」「随時」のサイクルで実施されることが想定されます。
「年次」
新年度に前年度の所得情報を踏まえて、要介護/要支援/総合事業の認定を受けている全ての対象者に交付
「月次」
住民税の所得更正や世帯員の転入出等によって、所得要件が変更された対象者等に交付
「随時」
新たに要介護認定等を受けた対象者や転入者等に交付
2割負担情報の国保連合会連携事務
2割負担者の情報を「受給者情報異動連絡票」に記載し、国保連合へ送付する必要があります。
さらに「高額介護サービス費の負担限度額」の見直しに基づき、市町村は、以下の事務処理を行うことになります。
現役並み所得者に対する勧奨通知、申請受付、判定処理
「世帯内に課税所得が145万円以上の1号被保険者がいる人」かつ「世帯内に要介護(支援)認定を受けている人」に該当する対象者への勧奨通知事務等が追加となります。
なお、課税所得等を基に「高額介護サービス費の負担限度額」の判定を行うために必要な税情報を関連システムから入手する必要があります。
勧奨通知後、申請が行われた対象者に対して、「現役並み所得相当(44,400円)」又は「一般(37,200円)」の判定を行います。
なお、課税所得等を基に「高額介護サービス費の負担限度額」の判定を行うために必要な税情報を関連システムから入手する必要があります。
勧奨通知後、申請が行われた対象者に対して、「現役並み所得相当(44,400円)」又は「一般(37,200円)」の判定を行います。
新しい判定基準に基づく高額介護サービス費支給処理
現役並み所得相当の対象者について、負担限度額を44,400円とし、高額介護サービス費の支給を行う必要があります。
※当記事は全国介護保険担当課長会議(平成26年11月10日開催)の提示資料を基に作成をしています。今後、介護保険制度改正の本施行までに、記載内容が異なる可能性があります。
添付
全国介護保険担当課長会議(平成26年11月10日開催)
1.新しい総合事業等について - PDFファイル
2.介護保険制度改正における費用負担に関する事項等について - PDFファイル
4.一定以上所得者の負担割合の見直しについて - PDFファイル