特集

介護保険制度改正について
平成26年6月に介護保険法の改正案が成立し、平成27年4月以降、順次施行されます。 wel.ne.jpでは介護保険制度の改正内容や今後の動向などの特集記事を随時、掲載していきます。

第5回 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要について(その2)

2014年12月17日
 「地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化」を目指して、「平成27年度介護保険制度改正」が行われます。(「平成27年度介護保険制度改正」の概要は、以下の特集記事を参照して下さい。)
「特集記事:第1回 平成27年度介護保険制度の改正内容について」

 当特集記事では、特に介護保険サービス利用者、介護保険サービス事業者、市町村等に影響の大きい改正内容を中心に、「平成27年度介護保険制度改正」の詳細内容を解説していきます。
 
 前回の特集記事に引き続き、今回も「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要を解説します。

<今回掲載内容>
 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」におけるサービス利用の流れ
 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の枠組み(実施方法、サービス基準等)
 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の円滑な移行

<前回掲載内容(12月2日掲載)>
 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のガイドライン概要
 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の構成内容、事業内容
 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」で提供されるサービスの類型
「特集記事:第4回 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要について(その1)」

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン案」のリンク先)
 全国介護保険担当課長会議(平成26年11月10日開催)
〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)
〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」におけるサービス利用の流れ


 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」ガイドライン(指針)の第4章で、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」におけるサービス利用の流れが示されています。

第4章に記載されている内容のうち、特に重要なポイントは以下の通りです。

<「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」利用の流れ>

被保険者が介護保険サービスの相談を行った際に、市町村は「介護給付」「予防給付」に加えて「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の説明を行う。

被保険者が「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のサービスのみを利用する場合は、要介護認定を省略し、基本チェックリストを用いて、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の対象者(以下、「総合事業対象者」と記載)と判断し、迅速に「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のサービスが利用できることを説明する。
(ただし、「総合事業対象者」となった後でも、要介護認定等の申請を行うことは可能であり、「要介護(又は要支援)」の認定が行われた場合は、「介護給付(又は予防給付)」を利用することが可能。)

「総合事業対象者」について、一定期間「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の利用がなかった後に「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の利用の希望があった場合は、再度、基本チェックリストを用いて、「総合事業対象者」に該当するかを判断する。

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のサービスのみを利用する場合は、「介護予防サービス計画」ではなく、「介護予防ケアマネジメント」によるケアマネジメント(アセスメントやケアプランの作成等)を行う。
(ただし、「予防給付」と「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の両方のサービスを利用する場合は、「介護予防サービス計画」によるケアマネジメント(アセスメントやケアプランの作成等)を行う。)

「介護予防ケアマネジメント」は「総合事業対象者」が居住する地域包支援センターが実施するが、市町村の状況に応じて、地域包支援センターから指定居宅介護支援事業者に委託することも可能とする。

市町村は「総合事業対象者」に対して、「総合事業対象者」である旨が記載された被保険者証を交付する。また、国保連合会に「総合事業対象者」の情報を送付する。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日 開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)」から転載し、吹き出しを追加


<「介護予防ケアマネジメント」の考え方>

「介護予防ケアマネジメント」のプロセスは、利用者の状態や基本チェックリストの結果を基に本人の希望するサービス等を踏まえて、以下の3パターンに分けて行う。

(1)原則的な介護予防ケアマネジメント(ケアマネジメントA)
(2)簡略化した介護予防ケアマネジメント(ケアマネジメントB)
(3)初回のみの介護予防ケアマネジメント(ケアマネジメントC)



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日 開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)」から転載


<「介護予防ケアマネジメント」の様式>

(1)原則的な介護予防ケアマネジメント(ケアマネジメントA)
「予防給付」で用いている様式を活用する他、市町村の判断で任意の様式を使用することも可能である。

(2)簡略化した介護予防ケアマネジメント(ケアマネジメントB)
市町村の判断でケアプランの様式を任意で簡略化したものを作成して使用することも可能である。ただし、市町村で統一しておくことが望ましい。

(3)初回のみの介護予防ケアマネジメント(ケアマネジメントC)
サービス事業の利用の前に利用者及びサービス提供者等とケアマネジメント結果等を共有することにより、ケアプランの作成に代えることもできる。


<「介護予防手帳(仮)」の活用>

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の実施に伴い、市町村は「介護予防手帳(仮)」の活用を検討する。

(補足説明)
「介護予防手帳(仮)」とは、高齢者が自分自身で「介護予防」への取り組みを支えるためのツールです。主に初回のみの介護予防ケアマネジメント(ケアマネジメントC)に該当する人(自ら「介護予防」に取り組むことができる高齢者を想定)が主な交付対象者として示されています。詳細は、以下の資料(243ページ目(通し番号では457ページ目)以降)を参照してください。

 1.新しい総合事業等について


「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の枠組み(実施方法、サービス基準等)


 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」ガイドライン(指針)の第6章で、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の実施方法、サービスの基準、サービスの単価、利用者負担等に関する内容が示されています。

 第6章に記載されている内容のうち、特に重要なポイントは以下の通りです。

<「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の実施方法>

「新しい介護予防・生活支援総合事業」の実施方法は、(1)市町村の直接実施、(2)委託による実施、(3)指定事業者によるサービス提供、(4)NPOやボランティア等への助成の4パターンの構成とする。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日 開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)」から転載


「サービス類型」毎の実施方法は、以下の表を参照してください。

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<「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の指定事業者制度の導入>

平成27年4月から、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の実施有無に関わらず、事業者からの申請内容を踏まえて、全ての市町村で「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の事業者指定を行う。

(補足説明)
 自市町村で「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」は未実施だが、他市町村で「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」を実施済の被保険者が自市町村に所在する事業者(市町村境に所在する事業者)を利用することも想定されるため、上記の取り扱いになります。
 また、上記の取り扱いを踏まえて、介護保険サービス事業者は、サービスを利用する被保険者の所在する市町村毎に、指定事業者の申請を行う必要があります。

「予防給付」を提供していた指定事象者の有効期間が「6年間」と定められていたが、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」を提供する指定事業者の有効期間は、市町村において、地域の実情に応じてその期間を定めることを可能とする。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日 開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)」から転載


改正介護保険法施行時の前日である平成27年3月31日時点で「予防給付」の指定事業者を、平成27年4月1日から「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の指定事業者とみなす経過措置を行う。(全ての市町村に所在する事業者が対象)

みなし経過措置期間は原則平成27年4月~平成30年3月末までの3年間とするが、市町村の定めに応じて、みなし経過措置期間を短くすることも可能とする。

「予防事業」から「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」への移行期間である平成27年4月~平成29年3月末までは、「予防給付」による指定の効力も残るため、みなし指定について、事業者から別段の申出が行われない場合、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の指定事業者と、「予防給付」の指定事業者の2つが効力を生じることになる。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日 開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)」から転載


<「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のサービス基準>

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のサービス基準は、市町村が定める。ただし、介護保険法令上で「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の実施において必ず遵守すべき基準が規定されているため、市町村は介護保険法令上で定められた基準を遵守する。

【介護保険法令上で定められている遵守すべき事項】
・事故発生時の対応
・従事者又は従事者であった者による秘密保持
・従事者の清潔保持と健康管理の管理
・廃止休止の届出と便宜の提供



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日 開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)」から転載


<「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のサービス基準>

現行の「介護予防訪問介護」、「介護予防通所介護」に相当するサービス単位は、国が定める額(「予防給付」の単位)を上限とし、サービスの種類や内容に応じて、市町村が定める。

1単位当たりの単価について、現行の「介護予防訪問介護」、「介護予防通所介護」に相当するサービスの場合、現行と同様の単価(3級地では10.84円(訪問介護)、10.54円(通所介護))を設定する。
現行の「介護予防訪問介護」、「介護予防通所介護」以外の多様なサービス(「訪問型サービスA~D」「通所型サービスA~C」)では、市町村の判断により、10円の単価を用いることも可能とする。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日 開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)」から転載し、吹き出しを追加


「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の加算について、地域の実情等に応じて市町村が定めるが、加算を行った結果、国が定める額(「予防給付」の単価)の上限額を超過することがないようにする。ただし、国が定めている特別地域加算等については、その範囲で単価の上限額を超過することができる。

サービスの種類に応じて、以下の通り、単価の設定を可能とする。

(1)現行の「介護予防訪問介護」、「介護予防通所介護」に相当するサービス
 月当たりの包括単価とする場合の他、利用1回ごとの出来高で定めることができるが、この場合、月の合計額が包括単価以下となるようにする。

(2)緩和した基準によるサービス
(「訪問型サービスA」「通所型サービスB」で指定事業者によるサービス提供によるもの)
  単価は、月当たりの包括単価、利用1回ごとの出来高のいずれも可能とする。
 
(3)上記以外のサービス
 委託の場合の単価設定、補助における補助単価の設定となる。


<「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の利用者負担)>

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の利用者負担は、サービスの種類や内容に応じて、市町村が定める。

なお、住民主体の支援等、事業への補助の形式で実施されるもの(配食サービス等)は、自主的に実施されるため、市町村ではなく、当該支援の提供主体が定めることも考えられる。

現行の「介護予防訪問介護」、「介護予防通所介護」に相当するサービスの利用者負担割合について、介護給付の利用者負担割合(原則1割負担、一定以上の所得者は2割負担に引き上げられる予定)等を勘案し、市町村が定める(2割以上の利用者負担の設定も可能)。

ただし、利用者の負担割合を1割負担(一定以上の所得者は2割負担)未満にすることはできない。(利用者負担割合について、介護給付の利用者負担割合の下限と同様にすることが定められています。)

現在の「介護給付」「予防給付」と同様に利用者負担の軽減を行う制度を実施する。(具体的なサービスの範囲等は今後提示予定)

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」において指定事業者から提供されたサービスを対象として、高額介護サービス費に相当する事業を市町村は実施する。


<「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の給付管理>

「予防給付」と「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のサービスを利用した場合、「予防給付」の支給限度額の範囲内で、「予防給付」と「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」を一体的に給付管理(※)する。
※介護保険サービス利用者の利用実績と介護保険サービス提供者のサービス実績を照らし合わせて、利用者限度額等の確認等を行う事務。

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」において、指定事業者のサービスを利用する場合にのみ、原則給付管理を行う。

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の給付管理における支給限度額は、「予防給付」の「要支援1」を目安として、市町村が定める。

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の給付管理について、国保連合会を利用し、審査・支払の委託を行うことが可能とする。なお、市町村が国保連合会へ給付管理を委託する際の留意事項は以下の通りとする。

【留意事項】
 (1)市町村が定めるサービスの単価や限度額は、単位で定める。
 (2)給付管理票表やその他作成について、全国統一の様式やルールに合わせる。
 (3)給付管理の対象サービスをあらかじめ決めおき、審査支払を国保連合会に委託する。
 (4)サービス単価の情報を国保連合会へ送付する。
 (5)受給者台帳や事業者台帳の情報を国保連合会へ送付する。

 

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の円滑な移行


 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」ガイドライン(指針)の第7章で、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の円滑な移行に向けたスケジュール等が示されています。

第7章に記載されている内容のうち、特に重要なポイントは以下の通りです。

市町村が条例で定める場合は、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の実施を平成29年4月まで猶予可能とする。

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」実施後も、既に要支援認定を受けている被保険者の更新認定までは、「介護予防訪問介護」、「介護予防通所介護」を継続して利用することができる。
(要支援者の認定有効期間は最長1年であることから、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」開始から1年間で全ての要支援者が「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」に移行される。)



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日 開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)」から転載


まとめ


 前回と今回の2回に分けて、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要を解説しました。

 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」は、市町村が主体となり、取り組む事業です。被保険者の身近な存在である市町村が主体となり、「介護予防」や「生活支援」を推進することが期待されています。

 市町村が「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の円滑な実施が行えるように、厚生労働省から「新しい介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」(指針資料)が提示されています。

 市町村は、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」を踏まえて、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の具体的なサービス内容や実施時期等を検討することになります。

 また、介護保険サービス利用者は「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の内容を踏まえて、サービスを利用することが可能となります。(介護保険サービス事業者はサービスを提供することが可能となります。)

次回は「新しい介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」に記載されている内容を基に「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の事務処理内容を掲載する予定です。(平成27年1月中旬頃掲載予定)

※当特集記事は全国介護保険担当課長会議(平成26年11月10日開催)の資料を基に作成をしています。
 今後、介護保険制度改正の本施行までに、記載内容が異なる可能性があります。


添付


〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要) - PDFファイル
〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案) - PDFファイル

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