特集

介護保険制度改正について
平成26年6月に介護保険法の改正案が成立し、平成27年4月以降、順次施行されます。 wel.ne.jpでは介護保険制度の改正内容や今後の動向などの特集記事を随時、掲載していきます。

第4回 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要について(その1)

2014年12月2日
 「地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化」を目指して、「平成27年度介護保険制度改正」が行われます。(「平成27年度介護保険制度改正」の概要は、以下の特集記事を参照して下さい。)
「特集記事:第1回 平成27年度介護保険制度の改正内容について」

 当特集記事では、特に介護保険サービス利用者、介護保険サービス事業者、市町村等に影響の大きい改正内容を中心に、「平成27年度介護保険制度改正」の詳細内容を解説していきます。

 全国介護保険担当課長会議(平成26年11月10日開催)で提示された、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン案」を基に「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要を、2つの記事に分けて解説します。

 <今回掲載内容>
  「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のガイドライン概要
  「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の構成内容、事業内容
  「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」で提供されるサービスの類型

 <次回掲載内容(12月中旬頃、掲載予定)>
  「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」におけるサービス利用の流れ
  「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の枠組み(実施方法、サービス基準等)
  「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の円滑な移行

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン案」のリンク先)
 全国介護保険担当課長会議(平成26年11月10日開催)
〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)
〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のガイドライン概要


「平成24年度介護保険制度改正」において、地域支援事業の中に「介護予防・日常生活支援総合事業」が創設されました。(概要は以下のサイトを参照して下さい。)
「介護予防・日常生活支援総合事業の手引き」について

 「平成27年度介護保険制度改正」では、「平成24年度介護保険制度改正」で創設された「介護予防・日常生活支援総合事業」を発展的に見直し、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」として、平成29年4月までに全ての市町村で実施することが定められています。

 市町村による「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の円滑な実施を支援するために、国は「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」ガイドライン(指針)を策定しています。

 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」ガイドライン(指針)は、7章構成となっています。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)」から転載


 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」ガイドライン(指針)で示されている内容で、特に重要となるポイントを、次章以降で解説します。

「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の構成内容、事業内容


 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」ガイドライン(指針)の第1章で、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の目的や考え方、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の内容や対象者等に関する内容が示されています。

 第1章に記載されている内容のうち、特に重要なポイントは以下の通りです。

全国一律の基準(サービスの種類・内容・人員基準・運営基準・単価等)となっている「予防給付」のうち、「訪問介護」「通所介護」を、平成29年度末までに「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」に移行する。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)」から転載


「訪問介護」「通所介護」以外のサービス(訪問看護、福祉用具等)は、引き続き「予防給付」によるサービス提供を継続する。


「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」で実施する事業は、「介護予防・生活支援サービス事業」(※1)、「一般介護予防事業」(※2)とする。
 ※1 「要支援者」及び「介護予防・生活支援サービス事業対象者」が利用可能
 ※2 「65歳以上の高齢者」が利用可能


「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」では「2次予防事業対象者把握事業」(基本チェックリストの配布等)は行わない。市町村や地域包括支援センターで相談に行われた対象者に対して、基本チェックリストを使用し、「介護予防・生活支援サービス事業対象者」の判断を行う。


「介護予防・生活支援サービス事業」を利用する人を「介護予防・生活支援サービス事業対象者」、「一般介護予防事業」を利用する人を「一般高齢者等」と呼称する。
 (「1次予防事業対象者」「2次予防事業対象者」の呼称は使用されなくなります。)



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)」から転載し、吹き出しを追加


「介護予防・生活支援サービス事業」の構成は以下の通りとする。
  ・訪問型サービス
  ・通所型サービス
  ・その他の生活支援サービス
  ・介護予防ケアマネジメント


「一般介護予防事業」の構成は以下の通りとする。
  ・介護予防把握事業
  ・介護予防普及啓発事業
  ・地域介護予防活動支援事業
  ・一般介護予防事業評価事業
  ・地域リハビリテーション活動支援事業



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)」から転載し、吹き出しを追加


「介護予防・生活支援サービス事業」「一般介護予防事業」の対象者や詳細な事業内容は以下の通りとする。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)」から転載


「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」で提供されるサービスの類型


 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」ガイドライン(指針)の第2章で、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のサービス類型事例が示されています。

 第2章に記載されている内容のうち、特に重要なポイントは以下の通りです。


「訪問型サービス」について、現行の「介護予防訪問介護」と同様のサービス事例(「(1)訪問介護」)に加えて、多様なサービス事例(「(2)訪問型サービスA」、「(3)訪問型サービスB」、「(4)訪問型サービスC」、「(5)訪問型サービスD」)を提示。


<サービス事例>
 (1)訪問介護(現行の「介護予防訪問介護」相当)
 【実施方法:事業者指定】
  現行の「介護予防訪問介護」と同様のサービス。

 (2)訪問型サービスA(緩和した基準によるサービス)
 【実施方法:事業者指定/委託】
  主に雇用労働者が生活援助(掃除、洗濯、調理などの日常生活の
  援助等)を行うサービス。

 (3)訪問型サービスB(住民主体による支援)
 【実施方法:補助(助成)】
  ボランティア主体(住民主体)で生活援助(掃除、洗濯、調理などの
  日常生活の援助)を行うサービス。

 (4)訪問型サービスC(短期集中予防サービス)
 【実施方法:市町村による直接実施/委託】
  市町村の保健師等が居宅での相談指導(退院後の体力改善に向けた
  相談指導等)を行うサービス。

 (5)訪問型サービスD(移動支援)
 【実施方法:補助(助成)】
  主に雇用労働者が移送前後の援助(外出時の支援等)を行うサービス。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)」から転載


「通所型サービス」について、現行の「介護予防通所介護」と同様のサービス事例(「(1)通所介護」)に加えて、多様なサービス事例(「(2)通所型サービスA」、「(3)通所型サービスB」、「(3)通所型サービスC」)を提示。


<サービス事例>
 (1)通所介護(現行の「介護予防通所介護」相当)」
 【実施方法:事業者指定】
  現行の「介護予防通所介護」と同様のサービス。

 「(2)通所型サービスA(緩和した基準によるサービス)」
 【実施方法:事業者指定/委託】
  主に雇用労働者やボランティアが事業所内でミニディサービスや
  運用・レクリエーション等を行うサービス。

 「(3)通所型サービスB(住民主体による支援)」
 【実施方法:補助(助成)】
  ボランティア主体(住民主体)で、通いの場を設け、体操、
  運動等の活動等を行うサービス。

 「(4)通所型サービスC(短期集中予防サービス)」
 【実施方法:市町村による直接実施/委託】
  市町村保健師等が公民館等で生活機能を改善するための
  運動器の機能向上や栄養改善等のプログラムを行うサービス。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)」から転載


「その他の生活支援サービス」として、以下の事例を提示。

 (1)外出や調理の実施が困難な者等に対して、栄養改善を目的とした配食サービス。
 (2)住民ボランティア等が行う見守り。
 (3)「訪問型サービス」「通所型サービス」の一体的提供とした生活支援サービス。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)」から転載


まとめ


 「平成27年度介護保険制度改正」では、団塊の世代が75歳以上となる2025年(平成37年)を見据えて、高齢者が住み慣れた地域で生活を維持できるようにするために、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステムの構築」の実現を目指しています。


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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日 開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)」から転載


 また、団塊の世代が75歳以上となる2025年(平成37年)には、介護保険料の平均額が現在の5,000円から8,200円程度に上昇することが見込まれており、「介護保険制度」の持続可能性のための重点化・効率化が必要となります。

 「地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化」を目指すため、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」を平成29年4月までに全ての市町村で実施されることになります。

 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の基本的な考え方として、以下の内容が示されています。


住民主体(ボランティアやNPO主体)のサービス・支援を充実させることにより、下記の実現を目指す。

 (1)現行の「介護予防訪問介護」「介護予防通所介護」よりも廉価な単価の
   サービス・支援を実現し、利用者の増加を実現させる。
 
 (2)利用者が増加することにより、要介護に至らない高齢者や要支援状態からの
   自立の促進を実現させる。



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資料:全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日開催)「〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案)」から転載


 また、上記にも記載している通り、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の特徴として、住民主体(ボランティアやNPO主体)が挙げられます。

 これまでは、ホームヘルパーの資格を有している人のみ、「介護予防訪問介護」のサービスを提供することが可能でしたが、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の多様なサービス(「訪問型サービスA~D」)では、ホームヘルパーの資格を有していない雇用労働者やボランティア等もサービスを提供することが可能となります。

 次回も今回に引き続き「新しい介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」に記載されている内容を基に「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要を解説します。
(平成26年12月中旬頃掲載予定)

※当特集記事は全国介護保険担当課長会議(平成26年11月10日開催)の資料を基に作成をしています。
 今後、介護保険制度改正の本施行までに、記載内容が異なる可能性があります。


添付


〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要) - PDFファイル
〔再掲〕介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案) - PDFファイル

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