「特集記事:第1回 平成27年度介護保険制度の改正内容について」
当特集記事では、特に介護サービス利用者、介護保険サービス事業所、市町村等に影響の大きい改正内容を中心に、「平成27年度介護保険制度改正」の詳細内容を解説していきます。
今回は、平成26年7月28日及び平成26年10月2日に厚生労働省から都道府県介護保険担当主管課に対して提示された事務連絡(「介護保険事務処理システム変更に係る参考資料」)を基に、「住所地特例」に係る事務処理の見直し内容を解説します。
事務連絡資料のリンク先)
介護保険事務処理システム変更に係る参考資料(平成26年7月28日事務連絡)
介護保険事務処理システム変更に係る参考資料(平成26年10月2日事務連絡)
「平成27年度介護保険制度改正」で予定されている「住所地特例」の見直しに関する概要は、以下の特集記事を参照してください。
「特集記事:第2回「サービス付き高齢者向け住宅への住所地特例の適用」の見直しに関する概要について」
「住所地特例」の変更内容及び事務処理の見直し
平成27年4月以降の「住所地特例」における主な変更内容は以下の通りです。
「住所地特例」の主な変更内容
○平成27年4月以降に「サービス付き高齢者向け住宅」に入居される人から「住所地特例」の対象者とする。
○「住所地特例」の対象者は、平成27年4月以降、施設が所在している市町村の「地域密着型サービス」や「地域支援事業」を利用することが可能となる。
(これまでは、施設に入所する前に所在していた市町村の「地域密着型サービス」や「地域支援事業」のみ利用することが可能でした。)
○「住所地特例」の対象者は、平成27年4月以降、施設が所在している市町村の「地域密着型サービス」や「地域支援事業」を利用することが可能となる。
(これまでは、施設に入所する前に所在していた市町村の「地域密着型サービス」や「地域支援事業」のみ利用することが可能でした。)
上記内容を踏まえて、平成27年4月以降の「住所地特例」に係る事務処理の見直し内容は以下の通りです。
「住所地特例」に係る事務処理の見直し内容
○介護保険サービス事業所は、「住所地特例」の対象者情報を介護給付費請求明細書に記載し、国保連合会へ請求する。
○市町村は、市町村内で管理している「住所地特例」の対象者情報を受給者異動連絡票に記載し、国保連合会へ送付する。
○市町村は、「住所地特例」の対象者が施設に所在している市町村で利用した「地域密着型サービス」や「地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)」の給付費を支払う。
○市町村は、市町村内で管理している「住所地特例」の対象者情報を受給者異動連絡票に記載し、国保連合会へ送付する。
○市町村は、「住所地特例」の対象者が施設に所在している市町村で利用した「地域密着型サービス」や「地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)」の給付費を支払う。
「住所地特例」における審査支払の流れ
平成27年4月以降の「住所地特例」における審査支払の流れについて、厚生労働省から以下のイメージ図が示されています。
上記資料で示している内容で、赤枠で囲っている部分が介護保険サービス事業所に影響のある内容、青枠で囲っている部分が市町村に影響のある内容となります。
介護保険サービス事業所における事務処理の見直し内容
平成27年4月以降のサービス提供年月分から介護給付費明細書に対して、「住所地特例」の対象者に関する情報を記載し、国保連合会へ請求する事務処理が追加となります。
また、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターは「住所地特例」の対象者に関する給付管理票を国保連合会へ提出する事務処理が追加となります。
市町村における事務処理の見直し内容
平成27年4月以降の受給者異動連絡票情報の送付について、以下の事務処理が見直されます。
受給者異動連絡票の事務処理見直し内容
○これまで「住所地特例」として自市町村で管理していた対象者情報を国保連合会に送付する。
○「特定施設入居者生活介護の指定を受けていない賃貸方式のサービス付き高齢者向け住宅」に入居されている人は、平成27年4月1日以降に該当する施設に入居した人のみを国保連合会に送付する。
○「住所地特例」の対象者内容に異動があった情報を国保連合会に送付する。
○「特定施設入居者生活介護の指定を受けていない賃貸方式のサービス付き高齢者向け住宅」に入居されている人は、平成27年4月1日以降に該当する施設に入居した人のみを国保連合会に送付する。
○「住所地特例」の対象者内容に異動があった情報を国保連合会に送付する。
また、「住所地特例」の対象者が施設の所在している市町村で利用した「地域密着型サービス」や「地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)」の給付費を支払う事務処理が追加となります。
その際に、留意する事項として、次の内容が提示されています。
「平成27年度介護保険制度改正」により、平成27年4月から新たな「介護予防・日常生活支援総合事業」が開始されます。(詳細な内容は特集記事:第4回 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要について(その1)にて解説)
ただし、新たな「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、「総合事業」と記載)は、平成27年4月から全国一律で開始されるのではなく、平成29年3月末までに市町村ごとで「総合事業」実施の猶予期間が設けられています。
そのため、保険者市町村(※1)と施設所在市町村(※2)の「総合事業」の実施状況が異なることがありますが、「住所地特例」の対象者は常に施設所在市町村の状況に合わせてサービスを利用することになります。
※1 「住所地特例」の対象者が施設に入所する前に所在していた市町村
※2 「住所地特例」の対象者が入所している施設の所在市町村
なお、上記表のパターン2に該当するケースの場合、保険者市町村は「総合事業」を実施していなくても、国保連合会から「総合事業」のサービスに関する請求が行われます。
また、上記表のパターン3に該当するケースの場合、保険者市町村は「介護予防訪問介護・介護予防訪問通所介護」が終了していますが、国保連合会から「介護予防訪問介護・介護予防訪問通所介護」のサービスに関する請求が行われます。
まとめ
前回の特集記事と今回の特集記事の2回に分けて、「平成27年度介護保険制度改正」で予定されている「住所地特例」の見直しに関する内容を解説しました。
介護保険サービス事業所は、介護給付費明細書に対して、「住所地特例」の対象者に関する情報を記載し、国保連合会に請求することになります。「介護保険制度改正」において、介護給付費明細書の項目追加は今回が初めてとなるため、事務処理で誤りが発生しないように留意する必要があります。
市町村は、平成27年4月からの受給者異動連絡票において、「住所地特例」の対象者情報を送付できるように、「住所地特例」の対象者情報を把握し、管理する必要があります。
更に、平成27年4月時点で「総合事業」が未実施だったとしても、「住所地特例」の対象者が施設所在市町村の「総合事業」サービスを利用されることを踏まえて、「総合事業」に関する給付費を支払う事務処理が行えるように準備を行う必要があります。
※当特集記事は平成26年7月28日及び平成27年10月2日に厚生労働省から都道府県介護保険担当主管課に対して提示された事務連絡(「介護保険事務処理システム変更に係る参考資料」)を基に作成をしています。
今後、介護保険制度改正の本施行までに、記載内容が異なる可能性があります。
添付
「資料2 住所地特例に係る事務の見直しの概要について」 - PDFファイル
「資料6 介護給付費請求書・明細書及び給付管理票様式」 - PDFファイル
「資料7 国保連合会とのインタフェースの変更点について」 - PDFファイル