特集

介護保険制度改正について
平成26年6月に介護保険法の改正案が成立し、平成27年4月以降、順次施行されます。 wel.ne.jpでは介護保険制度の改正内容や今後の動向などの特集記事を随時、掲載していきます。

第2回 「サービス付き高齢者向け住宅への住所地特例の適用」の見直しに関する概要について

2014年10月27日
 「地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化」を目指して、「平成27年度介護保険制度改正」が行われます。(「平成27年度介護保険制度改正」の概要は、以下の特集記事を参照して下さい。)
「特集記事:第1回 平成27年度介護保険制度の改正内容について

 当特集記事では、特に介護サービス利用者、介護保険サービス事業所、市町村等に影響の大きい改正内容を中心に、「平成27年度介護保険制度改正」の詳細内容を解説していきます。

 今回は、「平成27年度介護保険制度改正」で予定されている「サービス付き高齢者向け住宅への住所地特例の適用」の見直しに関する概要を解説します。

「住所地特例」の概要について


 介護保険制度では、65歳以上の人及び40歳~64歳までの医療保険加入者が「被保険者」となり、所在している市町村(「保険者」)に介護保険料を納め、所在している市町村が介護給付費(介護サービスにかかった費用)の9割を負担するのが原則とされています。

 しかし、介護保険施設が多い市町村の場合、介護給付費の負担が重くなることから、特例として、介護保険施設の入所者は施設に入所する前に所在していた市町村の「被保険者」となり、施設に入所する前に所在していた市町村が「保険者」となります。
(介護保険法第13条 住所地特例対象施設に入所又は入居中の被保険者の特例)



資料:平成25年10月2日開催 社会保障審議会 介護保険部会(第50回)「その他の検討事項」から転載


「住所地特例」の対象範囲の見直しの経緯について


 平成12年の介護保険制度施行時は、「住所地特例」の対象範囲について、介護保険3施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設)に限定されていました。

 その後、「平成18年度介護保険制度改正」において、施設所在地市町村の介護給付費負担等の影響を考慮して、「住所地特例」の対象範囲の拡大が行われました。(「住所地特例」の対象施設について、「特定施設(有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、適合高専賃)」と「養護老人ホーム」が追加)

 更に、「平成24年度介護保険制度改正」において、サービス付き高齢者向け住宅の創設に伴い、「住所地特例」の対象範囲の見直しが行われました。(特定施設(有料老人ホーム)において、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていない賃貸方式のサービス付き高齢者向け住宅は「住所地特例」の対象外)

 今回の「平成27年度介護保険制度改正」では、「平成24年度介護保険制度改正」で対象外とされた施設の規定に対する見直しが行われる予定です。



資料:平成25年10月2日開催 社会保障審議会 介護保険部会(第50回)「その他の検討事項」から転載し、H27年改正後を追加


地域密着型サービスと地域支援事業利用の見直し


 「住所地特例」の対象者は、施設に入所する前に所在していた市町村が「保険者」であることから、入所後に所在している市町村が提供する「地域密着型サービス」や「地域支援事業」を利用することができませんでした。

 しかし、団塊の世代が75歳以上となる2025年(平成37年)を見据えた「地域包括ケアシステムの構築」の考えからすれば、入所後に所在している市町村で「地域密着型サービス」や「地域支援事業」を利用することが望ましいため、平成27年4月以降は、「住所地特例」の対象者も入所後に所在している市町村が提供する「地域密着型サービス」や「地域支援事業」を利用できるように見直しが行われます。



資料:平成25年10月2日開催 社会保障審議会 介護保険部会(第50回)「その他の検討事項」から転載


まとめ


 これまで「サービス付き高齢者向け住宅」に住んでいる人の殆どは「住所地特例」の対象外とされていましたが、平成27年4月以降に「サービス付き高齢者向け住宅」に入居される人も「住所地特例」の対象者となります。

 さらに「住所地特例」の対象者は、平成27年4月以降、施設が所在している市町村の「地域密着型サービス」や「地域支援事業」を利用することができるようになります。

 上記内容を踏まえて、平成26年7月28日及び平成26年10月2日に厚生労働省から都道府県介護保険担当主管課へ事務処理内容の変更に関する事務連絡(「介護保険事務処理システム変更に係る参考資料」)が提示されています。

 事務連絡に記載されている事務処理の見直しとして、以下の内容が示されています。

事務処理見直し

○介護保険サービス事業所は、「住所地特例」の対象者情報を介護給付費請求明細書に記載し、国保連合会へ請求する。

○市町村は、市町村内で管理している「住所地特例」の対象者情報を受給者異動連絡票に記載し、国保連合会へ送付する。

○市町村は、「住所地特例」の対象者が施設に所在している市町村で利用した「地域密着型サービス」や「地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)」の給付費を支払う。

 また、「住所地特例」の事務処理の見直しに伴い、介護保険サービス事業所や市町村で利用されている事務処理システムも大きな改修を行う必要があります。

 次回は、平成26年11月上旬に「住所地特例に係る事務処理の見直しについて」として、介護保険サービス事業所や市町村の事務処理の見直しに関する詳細な内容を解説します。

※当記事は平成25年10月2日に開催された介護保険保障審議会 介護保険部会(第50回)で提示された情報を基に作成をしています。
今後、介護保険制度改正の本施行までに、記載内容が異なる可能性があります。


添付


平成25年10月2 開催 介護保険保障審議会 介護保険部会(第50回)(その他の検討事項について) - PDFファイル

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