「特集記事:第1回 平成27年度介護保険制度の改正内容について」
当特集記事では、特に介護保険サービス利用者、介護保険サービス事業者、市町村等に影響の大きい改正内容を中心に、「平成27年度介護保険制度改正」の詳細内容を解説していきます。
これまでの特集記事では、主に「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」「住所地特例の見直し」「一定以上所得者の利用者負担の見直し」に関する内容を解説しました。
今回は、全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議(平成27年3月2日、3日)等で提示された資料を基に、その他の改正内容(「特定入所者介護(予防)サービス費の見直し」、「第1号介護保険料の多段階化・軽減強化」、「特別養護老人ホームの重点化」)を解説します。
また、多床室の負担限度額の見直し等に関する事務連絡(平成27年2月18日)が提示されたことを踏まえて、平成27年4月以降の負担限度額認定証に関する内容も解説します。
全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日開催)
4.一定以上所得者の負担割合の見直しについて
特別養護老人ホームの重点化等について
全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(平成27年3月2日、3日開催)
1.金融機関本店等に対する一括照会の実施について
2.介護保険制度改正における費用負担に関する事項等について
介護保険最新情報Vo1.425(平成27年2月18日掲載)
介護保険最新情報Vo1.425
「特定入所者介護(予防)サービス費」の見直し
平成17年10月から特別養護老人ホーム等の費用のうち、食費や居住費は本人の自己負担が原則となっていますが、所得が少ない方(住民税非課税世帯)への負担を軽減するため、利用者の申請に基づき、食費・居住費が支給されていました。(食費や居住費の負担軽減のために支給されるサービス費を「特定入所者介護(予防)サービス費」といいます。)
しかし、「特定入所者介護(予防)サービス費」は、本来の介護給付と異なった福祉的な性格等を持っており、「食費や居住費を負担して在宅で生活を行っている方との公平性を図る必要があること」や「預貯金等を保有し負担能力が高いにも関わらず、保険料を財源とした補足給付が行われる不公平を是正する必要性があること」といった観点から、平成27年8月と平成28年8月のタイミングで「特定入所者介護(予防)サービス費」の見直しが行われます。
「特定入所者介護(予防)サービス費」の見直しの概要について、以下の内容が示されています。
詳細な内容を、以下に解説します。
配偶者の所得の勘案(平成27年8月施行)
<概要内容>
これまで、利用者が世帯分離をした場合には、世帯分離前の状況に関わらず、本人が住民税非課税であれば、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者とされていましたが、平成27年8月以降は、配偶者との世帯が分離していても、配偶者の所得を勘案し、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者かを判断することになります。
<確認方法>
配偶者の有無を申請書に記載し、申請書に記載されている配偶者の所得状況を確認します。
また、必要に応じて、戸籍照会を行います。
<配偶者の範囲>
婚姻届を提出していない事実婚の場合も配偶者の対象となります。
DV防止法における配偶者からの暴力を受けた場合や、配偶者が行方不明の場合等は、配偶者の対象外となります。
<その他留意事項>
所得更正により配偶者が非課税から課税に転換した場合には、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象とならないため、「特定入所者介護(予防)サービス費」の判定を行った時点まで遡及して差額の調整を図ることが示されています。
特例減額措置(※)の対象者は、入所者本人が非課税であり、世帯外の配偶者が課税されていても、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象として配慮することが示されています。
※特例減額措置
住民税課税世帯は、原則として「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者にはなりませんが、一定の要件(高齢夫婦世帯等において、片方が施設に入ることで居宅に残された配偶者の生活が困難になる場合等)を満たしている場合には、特例減額措置として「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象となります。
これまで、利用者が世帯分離をした場合には、世帯分離前の状況に関わらず、本人が住民税非課税であれば、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者とされていましたが、平成27年8月以降は、配偶者との世帯が分離していても、配偶者の所得を勘案し、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者かを判断することになります。
<確認方法>
配偶者の有無を申請書に記載し、申請書に記載されている配偶者の所得状況を確認します。
また、必要に応じて、戸籍照会を行います。
<配偶者の範囲>
婚姻届を提出していない事実婚の場合も配偶者の対象となります。
DV防止法における配偶者からの暴力を受けた場合や、配偶者が行方不明の場合等は、配偶者の対象外となります。
<その他留意事項>
所得更正により配偶者が非課税から課税に転換した場合には、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象とならないため、「特定入所者介護(予防)サービス費」の判定を行った時点まで遡及して差額の調整を図ることが示されています。
特例減額措置(※)の対象者は、入所者本人が非課税であり、世帯外の配偶者が課税されていても、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象として配慮することが示されています。
※特例減額措置
住民税課税世帯は、原則として「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者にはなりませんが、一定の要件(高齢夫婦世帯等において、片方が施設に入ることで居宅に残された配偶者の生活が困難になる場合等)を満たしている場合には、特例減額措置として「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象となります。
預貯金等の勘案(平成27年8月施行)
<概要内容>
これまで、住民税非課税世帯の場合、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象とされていましたが、平成27年8月以降は「預貯金等」の要件も勘案し、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者かを判断することになります。
<預貯金等の基準>
単身の場合は、1,000万円以下、夫婦の場合は、2,000万円以下の場合に、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者とする基準が示されています。
<預貯金等の範囲>
「預貯金等」の範囲の考え方について、以下の資料が示されています。
<適正な申請の確保方法>
申請者が本人の預貯金額等の額を申告することを基本としつつ、以下の措置を行うことによって、適正な申告を担保する案が示されています。
○預貯金額の写し
預貯金額等の申告に際し、預貯金額の写し(原則として2ヶ月前まで)を添付することが求められます。
なお、預貯金額の写しについて、毎年の提出までは求めず、必要に応じて提出することとなります。
○不正行為等への加算金
預貯金額の申告において、不正行為が行われた場合、給付した額の返還に加えて、給付額の最大2倍の加算金(給付額を含めると3倍)を課すことができることとされています。
○金融機関への照会
金融機関に対して、預貯金の照会を行うことが可能とされています。
金融機関への照会を行う場合、本人及び配偶者の同意書が必要となります。
(「同意書」がないと金融機関への照会を行うことができません。)
「不正行為等への加算金」や「金融機関への照会」の詳細な内容は、以下のサイトに掲載されています。
全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(平成27年3月2日、3日開催)
1.金融機関本店等に対する一括照会の実施について
2.介護保険制度改正における費用負担に関する事項等について(38~39頁目)
これまで、住民税非課税世帯の場合、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象とされていましたが、平成27年8月以降は「預貯金等」の要件も勘案し、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者かを判断することになります。
<預貯金等の基準>
単身の場合は、1,000万円以下、夫婦の場合は、2,000万円以下の場合に、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者とする基準が示されています。
<預貯金等の範囲>
「預貯金等」の範囲の考え方について、以下の資料が示されています。
<適正な申請の確保方法>
申請者が本人の預貯金額等の額を申告することを基本としつつ、以下の措置を行うことによって、適正な申告を担保する案が示されています。
○預貯金額の写し
預貯金額等の申告に際し、預貯金額の写し(原則として2ヶ月前まで)を添付することが求められます。
なお、預貯金額の写しについて、毎年の提出までは求めず、必要に応じて提出することとなります。
○不正行為等への加算金
預貯金額の申告において、不正行為が行われた場合、給付した額の返還に加えて、給付額の最大2倍の加算金(給付額を含めると3倍)を課すことができることとされています。
○金融機関への照会
金融機関に対して、預貯金の照会を行うことが可能とされています。
金融機関への照会を行う場合、本人及び配偶者の同意書が必要となります。
(「同意書」がないと金融機関への照会を行うことができません。)
「不正行為等への加算金」や「金融機関への照会」の詳細な内容は、以下のサイトに掲載されています。
全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(平成27年3月2日、3日開催)
1.金融機関本店等に対する一括照会の実施について
2.介護保険制度改正における費用負担に関する事項等について(38~39頁目)
「特定入所者介護(予防)サービス費」において、「配偶者の所得の勘案」や「預貯金等の勘案」を行うことを踏まえて、申請書等の様式が見直されます。
申請書や同意書の様式について、以下の案が示されています。
非課税年金の勘案(平成28年8月施行)
<概要内容>
「市町村民税世帯非課税」で「課税年金収入額+合計所得金額が80万円以下」の場合に、「特定入所者介護(予防)サービス費」の利用者負担段階が「第2段階」として判定されていましたが、平成28年8月から「遺族年金」や「障害年金」といった非課税年金も含めて、「特定入所者介護(予防)サービス費」の利用者負担段階の判定が行われます。
[これまでの「利用者負担第2段階」の判定基準]
「市町村民税世帯非課税」で「課税年金収入額+合計所得金額が80万円以下」
[平成28年8月以降の「利用者負担第2段階」の判定基準]
「市町村民税世帯非課税」で「課税年金収入額+非課税年金収入額(追加)+合計所得金額が80万円以下」
「市町村民税世帯非課税」で「課税年金収入額+合計所得金額が80万円以下」の場合に、「特定入所者介護(予防)サービス費」の利用者負担段階が「第2段階」として判定されていましたが、平成28年8月から「遺族年金」や「障害年金」といった非課税年金も含めて、「特定入所者介護(予防)サービス費」の利用者負担段階の判定が行われます。
[これまでの「利用者負担第2段階」の判定基準]
「市町村民税世帯非課税」で「課税年金収入額+合計所得金額が80万円以下」
[平成28年8月以降の「利用者負担第2段階」の判定基準]
「市町村民税世帯非課税」で「課税年金収入額+非課税年金収入額(追加)+合計所得金額が80万円以下」
「特定入所者介護(予防)サービス費」の見直しに伴う既入所者への配慮
「特定入所者介護(予防)サービス費」の見直しに伴い、平成27年8月以降、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象から対象外となる方について、各施設の判断で利用者の負担増の激変緩和を図る観点から、基準費用額を上限として設定する等の配慮措置を厚生労働省から全国老人福祉施設協議会等に要請する方向で調整を行うことが示されています。
第1号介護保険料の多段階化・軽減強化
今後の更なる高齢化に伴い、介護保険料の負担水準の上昇が見込まれており、低所得者の家計に与える負担が更に重くなることが想定されています。
そのため、平成27年度から、65歳以上の全体の約3割に該当する非課税世帯(第1段階~第3段階)に対して、新たに公費を投入し、介護保険料の負担軽減が行われます。
また、所得水準に応じて、きめ細やかな保険料設定を可能とするために、介護保険料の標準負担段階を第6段階から第9段階へ見直しが行われます。
特別養護老人ホームの重点化
平成27年4月以降、特別養護老人ホームは、居宅での生活が困難な中重度の要介護高齢者を支える施設としての機能に重点化が図られることになります。
そのため、新規に入所する方の要件として、原則として「要介護3」以上に限定されることになります。
ただし、「要介護1」や「要介護2」の方に対しても、やむを得ない事情により特別養護老人ホーム以外での生活が著しく困難であると認められる場合には、市町村の適切な関与の下、施設ごとに設置している入所施設検討委員会を経て、特例的に特別養護老人ホームへの入所が認められることになります。
【「要介護1」や「要介護2」の対象者に関する考慮事項】や【市町村の適切な関与】について、以下の内容が示されています。
多床室の負担限度額の見直し
多床室の負担限度額の見直し等に関する事務連絡(平成27年2月18日)において、平成27年4月からの介護保険施設等における多床室の基準費用額が320円から370円に改定されることを受け、多床室の負担限度額が320円から370円に改定されることが記載されています。
また、負担限度額認定証の有効期間終了日に関する取り扱いに関する留意事項が提示されています。
以下に、負担限度額認定証の取り扱い等に関する内容を解説します。
負担限度額が変更となる対象者
「利用者負担第2段階」「利用者負担第3段階」の方が対象となります。
(「利用者負担段第1段階」で認定されている方は、平成27年4月以降も多床室の負担限度額は0円に据え置かれるため、影響はありません。)
(「利用者負担段第1段階」で認定されている方は、平成27年4月以降も多床室の負担限度額は0円に据え置かれるため、影響はありません。)
負担限度額認定証の取り扱いや国保連合会への送付について
平成27年3月31日までに発行されている負担限度額認定証について、多床室の負担限度額が320円と記載されていますが、必ずしも同日までに再交付する必要はなく、平成27年4月以降は、改訂後の負担限度額(370円)に読み替えての対応で差し支えないこととされています。
平成27年4月以降に発行する負担限度額認定証は、改訂後の負担限度額(370円)を記載して発行する必要があることが示されています。
さらに、国保連合会での審査支払のために、介護保険者は平成27年4月度の受給者異動連絡票において、改訂後の負担限度額(320円⇒370円)に修正し、国保連合会へ送付する必要があります。
平成27年4月以降に発行する負担限度額認定証は、改訂後の負担限度額(370円)を記載して発行する必要があることが示されています。
さらに、国保連合会での審査支払のために、介護保険者は平成27年4月度の受給者異動連絡票において、改訂後の負担限度額(320円⇒370円)に修正し、国保連合会へ送付する必要があります。
負担限度額認定証の有効期間終了日に関する取り扱い
負担限度額認定証について、「平成27年6月30日」までの有効終了日を「平成27年7月31日」として取り扱えることとされています。
上記内容を踏まえ、市町村は受給者異動連絡票において、負担限度額認定の有効終了日を「平成27年7月31日」に設定し、国保連合会へ送付する必要があることが留意事項として示されています。
上記内容を踏まえ、市町村は受給者異動連絡票において、負担限度額認定の有効終了日を「平成27年7月31日」に設定し、国保連合会へ送付する必要があることが留意事項として示されています。
まとめ
今回の特集記事では、「特定入所者介護(予防)サービス費の見直し」、「第1号介護保険料の多段階化・軽減強化」、「特別養護老人ホームの重点化」について、解説を行いました。
「地域包括ケアシステムの構築」に向けた重点化・効率化の施策として、「特別養護老人ホームの重点化」が実施され、「費用負担の公平化」に向けた施策として、「特定入所者介護(予防)サービス費の見直し」、「第1号介護保険料の多段階化・軽減強化」が実施されます。
「特定入所者介護(予防)サービス費の見直し」について、平成27年8月以降は、「配偶者の所得」や「預貯金等」等を勘案し、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者かを判断することになるため、申請時に必要な内容(配偶者に関する情報、預貯金等に関する情報)を事前に準備する必要があります。
市町村は「配偶者の所得」や「預貯金等」等を考慮の上、「特定入所者介護(予防)サービス費」の対象者の判定事務を行うことになります。
また、平成27年4月から多床室の負担限度額が変更となります。平成27年2月18日に提示された事務連絡内容を受けて、平成27年4月度以降の請求事務で混乱が生じないように、市町村等は介護保険施設や利用者へ周知することが求められています。
※当記事は全国介護保険担当課長会議(平成26年11月10日開催)、全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議(平成27年3月2日、3日開催)、介護保険最新情報Vol.425(平成27年2月18日掲載)の提示資料を基に作成をしています。今後、介護保険制度改正の本施行までに、記載内容が異なる可能性があります。
添付
全国介護保険担当課長会議(平成26年11月10日開催)
1.指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について - PDFファイル
4.一定以上所得者の負担割合の見直しについて - PDFファイル
全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議(平成27年3月2日、3日開催)
1.金融機関本店等に対する一括照会の実施についてて - PDFファイル
2.介護保険制度改正における費用負担に関する事項等について - PDFファイル
介護保険最新情報Vol.425(平成27年2月4日掲載)
平成27年度の介護報酬改定に伴う介護保険施設等の多床室の負担限度額の見直し等にかかる負担限度額認定証の取扱いについて - PDFファイル