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インタビュー 「ケアの現場から」
ソーシャルケア研究所・本間清文さんの監修で、ケアの現場のさまざまな職種の声を届けていきます。

第6回 「介護で嫌な思いをしてほしくない」

和田真由美さん(デイサービス) 後編
2011年10月11日
前回から引き続き、目黒区のデイサービスに生活相談員として勤務されている和田真由美さんのインタビューをお届けします。聞き手は、この連載で監修者としてご協力いただく、ソーシャルケア研究所の本間清文さんです。

※個人情報保護のため、一部、フィクションを加えています


介護で嫌な思いをしてほしくない
和田真由美さん
和田:私は祖母を看たいと言って介護の仕事を始めたのに、ほとんど祖母のケアに関われなかったことは未だに負い目ですね。亡くなった後、残された家族の生活も視野に入れられたらいいなと思うようになりました。
祖母が亡くなる過程で、家族の辛さとか、残された家族の生活とかを考えるようになりました。それが、大きな転機になったと思います。

本間:おばあちゃんが亡くなって、残された家族の辛さ。いろいろ思うところがあったんですね。


和田:そうですね。介護って、例えば「1ヶ月後に亡くなります。」ってわかっていたら、多くの人は仕事を休職しても一緒にいる時間をつくると思うんですよ。でも現実には1年後になくなるかもしれないし、2年後、3年後かもしれない。わからないですよね。

 そんなふうに先が読めない中でも、自分の生活を犠牲にして介護に当たる人や仕事を辞めて介護に専念する人がいる。それだけ必死で介護した後に再就職先がなかったり、介護した時間を「犠牲」と感じるような状況にはなってほしくない。介護したことで後悔はしてほしくない。うまく言えないんですけど、そういうことを考えるようになったかなと。

 ご本人はいなくなるけど、その居なくなった事実を背負いながらも、家族の生活は続いていくわけで。だからこそ、介護が終わった後のご家族の気持ち的な部分まで考えられたらいいなというのが自分の中にできました。

 思うに介護って「最期、大変でしたね。」とか「介護って大変ですよね、しんどいですよね。」「一緒に居れて幸せですね。」「おばあちゃん看取れて幸せでしたね。」というような言葉だけじゃ語れないですよね。そういういろんな面を、利用者さんのご家族や自分の家族との関わりの中で見ることができたかなと、思います。

 例えば、要介護1という介護の認定上は軽い人も、要介護1だからこそ、先行きが不安だったりすると思うんです。このあとどんどん悪くなっていくのかしらとかね。
 そういういろいろな状況があると思うので、一言では言い表せないものだということも忘れずに、利用者さんのご家族も視野に入れながらケアしていけるようなりたいですね。でもそういうことを考えすぎると何も言えなくなっちゃいますけどね。(笑)

本間:僕が勉強させていただきました。

和田:いや、ぜんぜんできていないですよ。でも、そう思います。

これからの抱負
本間:エピソード聞いていると、老人ホーム時代のものばかりですが、今、お勤めのデイサービスでのエピソードが出てこないのは?

和田:今の職場は現在進行中なので、まだ客観的に見れていない、話せる段階ではないというのはあるかもしれないですね。

本間:今後、ご自分の中で、こうなりたいなどありますか?

和田:ご家族のサポートだけでなく、介護職のサポートもできるようになりたいなと思っています。
 やっぱり介護って、肉体労働というイメージがあるかもしれませんが、精神労働的な面がすごく強いことを、自分自身が体調を崩したときにすごく思いました。ですので、介護職の精神的なサポートやその問題提起、代弁などしていければいいなと思います。

 看護師さんの方は感情労働※1という概念が浸透している感じがありますけど、介護職ではまだまだですし、クローズアップされていないイメージがあります。でも、やっぱり人の死に関わり、利用者さんの最期の大事な時間にお付き合いする中での感情労働的な面へのサポートがもうちょっとクローズアップされたら嬉しいなと。

本間:それで苦しんだんですもんね。

和田:そうですね。

本間:そこが結局、燃え尽きちゃう原因となり、離職に繋がっているところも多いでしょうね。

和田:介護に対する前向きな気持ちがあって入職した人たちが、長く続けられるようになったらいいなと思います。結構、ケアチームの中では夜眠れない、利用者さんの夢を見る、ナースコールがずっと聞こえる、利用者さんの前では泣きたくても泣けないという話が多かったです。だからこそ、介護職への精神的サポートが充実したらいいなと思います。私自身、一番転職を考えたのは、のめりこんで自分自身がまいってしまっていた時期でした。もうホントに辞めたかったですね、介護なんてって思いましたね。

本間:ご自分に対してのセルフケアは?

和田:あー。考えてなかったですね。そこが抜けるのが、たぶん一番いけないところですね。考え始めちゃうと、自分を置き去りでどんどん考えていくので、たぶんそこで具合が悪くなるタイプだと思います。

本間:現在は休みはちゃんと休めてるんですか?

和田:はい。できるだけ介護と違うことを、しようと思っていますね。

本間:そうですよね、違うことをするのはすごく大事ですよね。セルフケアは大事なところです。
それでは、今日はどうもありがとうございました。

和田:こちらこそありがとうございました。


※1:患者などから怒り、悲嘆などネガティブな感情を投げつけられても、自らの感情をコントロールしなければならない労働概念


<インタビュー後記>
 今回、お話を聞かせていただいた和田さんのようなタイプはあまり多くはないと思っている。老人本人だけでなく、その介護家族にまで視野を広げケアに当たっている方というのは。

 私も介護保険の前にデイサービスに勤めていたが、当時は利用者への関わりだけでなく、そのご家族の支援や相談にもよく乗っていたものだった。在宅では老人本人を介護しているのは家族なのだから、家族支援は福祉が行うべき当然のこととして行っていた。

 しかし、それが介護保険で競争原理が取り入れられ、多くの事業所がそんな余裕がなくなってしまった。そんなことをしていたら他所の事業者に顧客を持っていかれてしまうし、家族へのケアは利潤に反映しない。営利市場主義の観点からは無駄なコストと取られかねない。

 一方で、そのような世知辛い制度が社会の信用を得るはずもなく、介護保険や介護職の不人気の原因はそういうところにもあるのではないかと考えている。

 そんな中、和田さんはご自分の体験を元に家族へのケアにも力を入れたいという。それは一見、地味で現在の介護制度からは評価されにくいシャドーワークである。

 サンテグジュペリの言葉に「大切なものは、目に見えない」というのがあるが、まさにそうしたシャドーワークは大切であるがゆえに、あまりクローズアップされない。介護保険はサービス選択の自由を謳っているが、果たして、私たちは何を基準に選んでいくのか。
 今一度、「介護サービスの質」とは何なのかを考える必要があるのではないかと感じた。



(おわり)

プロフィール
和田 真由美(わだ まゆみ)
目黒区デイサービス勤務・生活相談員・介護福祉士。
専門学校卒業後、障がい者向けグループホームに勤務。その後は、夜間学校にて福祉と心理学等を学び、特別養護老人ホームでのユニットリーダーとしての勤務を経て、目黒区のデイサービスにて生活相談員として活動している。


ケア現場の質を高め、ケア関係職の地位待遇を向上するためには、現場で起きていることを社会に発信するソーシャルアクションや高齢者のアドボカシー(代弁)が欠かせません。「ケアの現場から」では、あなたの身近に起こったケア現場でのエピソードや想いを、本間清文氏がインタビュー形式で聞かせていただきます。ご希望の方はこちらからお問い合わせください。

※2011年8月16日取材

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