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アンカー通信 「社会福祉士にできること」
成年後見制度の普及・啓発に取り組むアンカーが、幅広く福祉・社会保障の分野を話題にします。

第9回 精神障がい者にとっての成年後見制度(3)

2011年8月31日
 精神障がい者は、統合失調症、気分障害、高次脳機能障害など、一緒に生活する家族にもなかなか理解が難しい症状のある障害であり、その調子の波により生きづらさを抱えることも多くあります。しかし、そんな中でも地域で生活している方はたくさんいるのです。

医療同意の難しさ
 医療同意に関して、本人が出来ない場合、一般的には親族による同意で治療や入院が行われます。しかし、第三者が後見人、保佐人であった場合、民法858条の法律家の解釈である「身体に関する意思決定は原則的には利用者本人にのみ許される」という『医療同意権の否定』と、精神保健法の『治療を受けさせ』『入院させ』『身体拘束を同意』『退院の際は引き取る』という『保護者としての行為』との間で、不整合性が生じてしまいます。
 精神障がい者にとって医療は生活から切り離すことのできないもので、特に調子の悪い時には入院が必要となる場合も多く、後見人にとっては対応に苦慮するところとなっています。


金銭管理と意思の尊重
 また、精神障がい者は、日常生活は本人自身で判断可能であっても、金銭管理についてはうまく判断できずに浪費してしまうなど、消費者被害や多重債務に陥り易い場合があります。
 民法改正にて軽度認知症や精神障がい者を想定して『補助類型』が創設されましたが、本人の同意をもって同意権付与の申立が必要となっています。

 民法858条には『成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない』とありますが、例えば医師から禁煙を指示されているのにもかかわらず煙草の購入を希望する本人への対応や、サプリメントを多量に購入しても「日用品の購入」として認めるのか、など本人の意思が一般常識から離れていても、それを意思として認めながら本人の権利を擁護するための法律行為を適切行うことができるのかというジレンマもあります。


最後に
 親族が後見人や保佐人を受任している場合ならば、医療同意が必要となった時には後見人、保佐人としてではなく親族として同意を行うことに何も問題はないでしょうし、いくら本人が望んでいても親族として必要ない商品と判断すれば購入することに正面から反対することも可能でしょう。

 精神障がい者の生活を考えていくと、現状での後見制度利用は財産管理と言う側面よりも身上監護の占める部分が多く、親族後見が基本とみなされているように取れます。そのため、親族が制度利用の必要性を認識しなければ制度の利用が進まず、結果的に権利を擁護されない精神障がい者が多くなるのではと危惧されるところです。

(一般社団法人成年後見事務所アンカー 水谷)


精神障がい者にとっての成年後見制度(1)はこちら
精神障がい者にとっての成年後見制度(2)はこちら


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