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アンカー通信 「社会福祉士にできること」
成年後見制度の普及・啓発に取り組むアンカーが、幅広く福祉・社会保障の分野を話題にします。

第2回 権利擁護について・成年後見制度総論

2011年5月30日
そもそも、権利擁護とは何か
 権利擁護というものを近年の施設の理念や基本方針のなかで見れば、「本人の尊重」「利用者本位」「自立支援」といった表現にあたると思います。これらは、2000年4月に定められた社会福祉法の基本的理念から導かれているものです。
 これを生活の場面で見れば、認知症高齢者の暮らしのサポート、悪徳商法への対応、虐待への対応等を指すと思います。つまり、権利擁護とは「住み慣れた地域で、誰もが安心して、自分らしく暮らし続けることができること」の総ての仕組み、支援活動といえるのではないでしょうか。

成年後見制度とは
 成年後見制度とは、判断能力の不十分な方々を保護するため、本人の法律行為能力を制限し、本人に代わって法律行為を行う人、または、本人による法律行為を手助けする人を、選任する法律上の制度です。2000年4月、それまでの禁治産・準禁治産制度を変えて設けられました。この制度には、家庭裁判所の審判に基づく「法定後見」と、本人の判断能力が十分なうちに将来の後見人候補者と契約を締結しておく「任意後見」とがあります。「法定後見」は民法改正に基づいて定められ、本人の判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助の3類型があります。「任意後見」は、新たに成立した任意後見契約に関する法律に基づいたものです。どちらも、目的は財産管理と身上監護です。

◇法定後見制度の概要◇
  後見 保佐 補助
対象となる方 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 判断能力が著しく不十分な方 判断能力が不十分な方
申し立てをすることができる人 本人、配偶者、四親等内の親族、検察官など、市町村長*1
成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)の同意が必要な行為 民法13条1項所定の行為*2 *3 *4 申し立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」(民法13条1項所定の行為の一部)*1 *2 *4
取り消しが可能な行為 日常生活に関する行為以外の行為 同上*2 *3 *4 同上*2 *4
成年後見人等に与えられる代理権の範囲 財産に関する全ての法律行為 申し立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」*1 同左*1

*1 本人以外の者の請求により、保佐人に代理権を与える審判をする場合、本人の同意が必要になる。補助開始の審判や補助人に同意見・代理権を与える審判をする場合も同じ
*2 民法13条1項では、借金、訴訟行為、相続の承認・破棄、新築・改築・増築などの行為があげられている
*3 家庭裁判所の審判により、民法13条1項所定の行為についても同意権・取消権の範囲を広げることができる
*4 日常生活に関する行為は除かれる
法務省Webサイト(成年後見制度~成年後見登記制度~http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html)より改変

成年後見制度の生まれた背景
 2000年前後に行われた社会福祉基礎構造改革で、介護サービス、障害者福祉サービスの利用システムは、それまでの措置(行政処分)から、契約(対等な関係・選択・自己決定)に基づく利用制度へと転換しました。その代表格が介護保険制度でした。
契約に基づく利用システムが機能するには、判断能力の不十分な認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者などの契約を支援する仕組みが必要でした。また、これまでの判断能力の不十分な方を保護する「禁治産・準禁治産」制度は、画一的・硬直的で利用しにくく、戸籍に記載されるため関係者が抵抗を感じるといった問題がありました。さらに、「禁治産・準禁治産」という差別的な用語など社会的偏見が強く利用は低調だったのです。
 こうした社会的背景により、判断能力の不十分な方々の財産管理はもとより、契約支援の制度、権利擁護の制度として、現代の社会福祉の理念(自己決定の尊重、残存能力の利用、ノーマライゼーション等)に基づいた新しい成年後見制度が始まったのです。同時に始まった介護保険制度とは、車の両輪と称されました。

判断能力とは何か
 成年後見制度は、民法の制度ですから、どうしても法律上の解釈になります。民法上の能力とは、契約の意味を認識しうる能力(意思能力 判断能力)、有効な契約をなしうる能力(行為能力)を指します。民法は、判断能力の不十分な方として、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人を定めています。これらの方を制限行為能力者といいます。

 次回から、成年後見制度の各論に入っていきます。来月は、高齢者について取り上げる予定です。

(一般社団法人成年後見事務所アンカー 須田幸隆)

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