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アンカー通信 「社会福祉士にできること」
成年後見制度の普及・啓発に取り組むアンカーが、幅広く福祉・社会保障の分野を話題にします。

第14回 引継書「将来のためのあんしんノート」

2011年12月29日
第14回となる今回は「あんしんノート」についてお届けします。

記録づくりの取り組み
 ある日突然、親が何も言い残すこともなく亡くなり、本人も支援者も戸惑う事態となった…。そういったきっかけがあったと言われている、船橋市育成会から発信された記録づくりの取り組みは、今、全国へ広がりをみせています。

 横浜市では船橋市育成会が作成した「親心の記録」が紹介されると、障がいのある子をもつ親たちの共感を呼びました。本人の基本的な情報から医療情報、重要な書類がどこにあるか、趣味・嗜好などの細部に至るまで、“記録”することの重要性が再認識されました。

 今では、様々な団体が障がい特性に配慮した、それぞれの「あんしんノート」を作成し始めるという広がりをみせています。前回紹介された横浜市の「後見的支援制度」においても、位置づけられています。



三人会結成とあんしんノート
 2010年2月、横浜市鶴見区内の障がいのある子どもを持つ親三人が、子どもの将来に向けて自分たちにできることをしようと「三人会」を立ち上げました。

 定期的に話し合いをする中で、先ず漠然とした不安を解消するための最初のステップとして、「親心の記録」をもとに鶴見区バージョンの「あんしんノート」を作成してみようということになったのです。

 作成にあたって、あんしんノートに対するそれぞれの思いや考え等を話し合い、次のような点に重きを置くことにしました。

  1. 障がいのある本人に視点を置く。
  2. できるだけ簡単に更新できるように工夫する。
  3. 障がい特性に合わせて、追加・削除ができるようにする。
  4. 鶴見区内だけではなく、多くの方々に自由に使ってもらえるようにする。

 (1.)の「本人に視点を置く」ことについては、最初から時間を掛けて話し合い、三人の考え方を確認しました。一言で言うと、親の思いと子どもの思いは必ずしも同じではないということです。本人の思いに寄り添い、本人の将来のための記録にするという視点を外さないようにすることは、三人の共通の考えであり、とても重要なことでした。

 (2.)、(3.)については、写真のようなリング式のクリアファイルを利用することで、利用しやすいものができたと思います。障がい者手帳や保険証等はコピーをし、調剤薬局から出されるお薬の説明書等は原本をそのままファイルする方法を考えました。このファイリング法はとても評判です。


 (4.)の多くの皆さんに利用して頂くために、一般社団法人 成年後見事務所 アンカーのホームページに掲載し無料でダウンロードできるようにしました。引継書「将来のためのあんしんノート」をもとに団体の特性に合わせたバージョンを作りたいという声を受けて、エクセル版も公開しました。


あんしんノートを書く会
 私自身、こうした作業をとおして子どもの大切な書類を整理することができました。リビングに子ども専用の引き出しが2段もできました。

 あんしんノートを書くプロセスには、気が付くことがたくさんあります。課題もみえてきます。何よりも母親しか知らない子どもの情報がとても多いことを再認識しました。普段から当たり前のようにこなしている子どものことについての知識・情報量は、間違いなくケアマネージャー以上です。そして、その母親の頭の中にある大切な情報を、ひとつひとつアウトプットしていく作業が必要なのです。

 あんしんノートは、持っているだけで安心してしまうこともあるようですが、書かなければ意味がありません。そこで、少人数のグループによる「あんしんノートを書く会」を実施することをお勧めしています。数人で集まっておしゃべりをしながら楽しく取り組むと一人では気付けない色々な課題が見えくることもあります。思いがけない情報交換ができ、同じような不安をもっていることが分かります。

 現在は様々なあんしんノートが世に出ています。その中から自分に合ったものを選び、少しずつ、できるところからいいので取り組むことが大切です。

 横浜市の重症心身障がいや肢体不自由の子ども達の親の会を繋ぐ「横浜重心グループ連絡会 ~ぱざぱネット~」が、三人会の「あんしんノート」などに医療情報を強化し、重心バージョンとして公開しました。中心となってとりまとめた齋藤聡子さんは、一般社団法人 成年後見事務所 アンカーのメンバーでもあるので、アンカーのホームページでも公開しています。

三人会 引継書「将来のためのあんしんノート」
http://www.ne.jp/asahi/suda/yuki/anchor/note2.html

ぱざぱのあんしんノート(重心バージョン)
http://www.ne.jp/asahi/suda/yuki/anchor/pazapa.html




あんしんノートの有効性
 あんしんノートはノートそのものもそうですが、それを作る過程を含めて次のようなたくさんの良いところがあります。

  • 重要な書類の整理ができ、必要に応じてすぐに取り出せるようになる。
  • もしもの時の備えができる。
  • 親しか知らない情報を共有することで、支援の輪を広げられる。
  • 自立のための準備ができる。
  • 成長を振り返ることができる。
  • 今後の課題がみえてくる。
  • 成年後見制度を利用する時も便利である。

 あんしんノートは、障がいのある子どもが地域で豊かに暮らしていけることを望む親心から始まりました。この「あんしんノート」を活用して、親が元気なうちに支援者に引き継いでいけるようにしたいものです。


一般社団法人成年後見事務所アンカー
三人会
根岸満恵

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