「横浜市障害者後見的支援制度」誕生!
前回の記事にてご紹介したような経緯と年月を経て、平成21年度に「後見的支援推進プロジェクトチーム」が立ち上げられました。
障がいのある当事者の団体からの代表、障がいのある子を持つ親の会の代表、障がいのある人を支援する施設や事業所の代表、有識者の代表など、実際の生活の状況をよく知る委員が招集されました。
そして、実際に利用する立場や場面を想定し、活発な意見交換が行われました。全部で8回にわたるプロジェクトチームの話し合いを踏まえてこの「後見的支援制度」が誕生したのです。平成21年度末のことでした。
こうして、平成22年度10月から市内4区での開始を目指して準備が始まりました。この制度の推進と調整、制度を普及・啓発したり「あんしんマネジャー」を雇用して研修する「後見的支援推進法人」と、実際に区ごとにこの制度を担い、受付や利用登録を行ったり成年後見制度についての案内をしたりする「後見的支援運営法人」の選定、「あんしんマネジャー」になる人材の募集と選考、念入りな研修などが行われました。
制度を支えるそれぞれの役割
この制度は、日常生活の見まもりを行い、将来の希望や不安などの相談を受付け、その人が願う地域での暮らしが実現できる方法を一緒に考えていくものであり、平成23年度は南区、保土ケ谷区、都筑区、栄区に住んでいる18歳以上の障がいのある人が登録対象となっています。利用についての費用はかかりません。
身体介助や家事援助などの直接支援は実施せず、また成年後見制度とは違って財産の管理や契約行為は行いません。あくまでも、見まもりや相談などで寄り添い利用者の「あんしん」を支える制度となっているのです。
制度の仕組みは次の図のようになっており、関わる人々でいくつかの役割を分担しています。
- 「あんしんキーパー」は、日常生活の中で本人の変化に気づき、変わったことがあればあんしんマネジャー等に報告する(できることをできる範囲で行う)役割を担います。制度利用者の近隣の方々や、日中活動先の職員の方などを想定しています。
- 「あんしんサポーター」は、定期訪問(例えば月1回等)により本人の状況を本人やあんしんキーパー等から確認し、報告書を作成する等の役割です。地域福祉に関心のある地域住民等から「障害者後見的支援運営法人」が雇用し、研修なども行なっていきます。
- 「あんしんマネジャー」は、本人のニーズに合わせて定期訪問(例えば3か月に1回等)により本人の状況把握、必要に応じて公的機関等に支援要請、権利擁護、本人の「希望と目標に基づいた生活」を支援、将来に対する漠然とした不安への相談に対応する等の役割となります。福祉専門職等を「横浜市障害者後見的支援推進法人」が雇用し、研修を実施します。各区の「障害者後見的支援運営法人」に一人ずつ派遣する形をとります。
「横浜市障害者後見的支援制度」の現状と課題
利用登録者数は、4区で136人、あんしんキーパーの登録数は122人(平成23年8月末)で、障がい種別による割合はおおよそ、知的障がいが6割、身体障がいが2割、精神障がいが2割となっているという報告がありました。プロジェクトの開始当初は、「精神障がいの利用登録は少ないのではないか?」という意見が当事者委員にあったようですが、その予想に反して精神障がいの方の相談および登録が増えつつあります。
また、利用登録者の年代は当初の予想とは異なり、30代~40代がもっとも多くなっているという報告もありました。親御さんが高齢の域に入っての「親亡き後」を心配するケースを想定していたものの、実際には「親が元気なうちに安心を得ておきたい」と考えたり、経済的な面やADL(日常生活動作)での自立とは別の面で、「ひとりだち」した生活を願うケースが増えていることも若い世代の利用が多い要因と言えるでしょう。
一方、利用登録者136人のうち、成年後見制度の申し立てを行なっているのは2名のみという事がわかりました。さらには障がい福祉の支援そのものを利用していないケースも少なからずあり、それまで支援を得ずに自分たちで暮らし続けていたことがうかがえます。
実際に利用登録した方やそのご家族からは、「支援者や家族に相談できない悩みを後見的支援制度のスタッフに相談する事が出来て良かった」「3月の大震災以後感じていた将来への不安が解消された」「制度に登録する過程で、子の育成を振り返る機会を持つことが出来て良かった」等の感想が寄せられています。
課題としては、研修会や相談会が即登録に結びつかない、対応しきれないケースについての他機関等との連携、あんしんマネジャーの負担軽減、あんしんキーパーへの教育・研修など制度を担う人材の育成等が挙げられています。
この「横浜市障害者後見的支援制度」という制度が、これらの課題を一つひとつ検証し、対策を講じることで、成年後見制度の伴走者となる制度となり、障がいがあってもその人らしく生きる支援の柱となることが望まれます。そして、広く長く市民に行き渡り、あたたかく支え合うことのできる横浜市となっていくことを願うものです。横浜から全国へあたたかい風を送ることができればと思います。
(一般社団法人成年後見事務所アンカー 斎藤聡子)


