特集

アンカー通信 「社会福祉士にできること」
成年後見制度の普及・啓発に取り組むアンカーが、幅広く福祉・社会保障の分野を話題にします。

第11回 日常生活自立支援事業と成年後見制度

2011年10月31日
はじめに
 現代における人の生活は「契約」で成り立っていると言っても過言ではありません。また日常生活では、常にその契約が必要か否か、適正かどうかを自分自身で判断することが求められます。

 これまでの『アンカー通信』では、成年後見制度の総論として、権利擁護と成年後見制度についての説明がなされてきました。判断能力が不十分な高齢者や知的障がい者、精神障がい者の方が成年後見制度を利用することにより安心して生活できることが期待されています。

 そんな中で今回は、成年後見制度を利用する程ではないけれど、金銭管理や福祉サービスの利用などに不安があって誰かに助けてもらう方がより本人らしく安心して生活することが出来ると思われる、高齢者や知的障がい者、精神障がい者の方に利用を検討していただきたい『日常生活自立支援事業』について説明いたします。


 この事業は、社会福祉法第一章第2条3項に第二種社会福祉事業のひとつとして“福祉サービス利用援助事業”が定義されたもので、同法第八章第二節には事業を行うに当たっての留意点が規定されています。介護保険及び成年後見制度(民法改正)に先だって平成11年10月から実施されています。

 実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施)です。利用できる方は判断能力が不十分な認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者等で、日常生活をおくるために必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人だけでは適切に行うことが難しい方で、尚且つこの事業の契約の内容について判断できる能力があると認められる方です。成年後見制度を補完する事業といわれ、当初は地域福祉権利擁護事業と称されていました。横浜市社会福祉協議会では「あんしんセンター事業」と言っています。

日常生活自立支援事業と成年後見制度の違い
 成年後見制度の補助類型と判断能力に違いが無いように感じる方もおられるのではないでしょうか。補助類型は新しい後見制度が制定された時に新設された制度です。悪徳商法に引っかかった時の対処や不動産の売買や賃貸契約に関わる法律行為について、申立の際代理権、同意権を指定すれば補助類型では補助人が契約の代理人になることが可能ですが、日常生活自立支援事業では法律行為の代理、代行は出来ないという違いがあります。



 日常生活自立支援事業で出来ることは次のような内容となります。
  • 公共料金などを払い忘れてしまうなどお金の管理が心配
  • 年金などの書類が届いても、どう手続きしたらいいか判らない
  • 年金や生活保護費で生活しているけれど、計画的にお金を使えない
  • 介護保険などの福祉サービスを利用する手続きがよくわからない
  • 預金通帳をちゃんと仕舞ったかいつも心配

 上記のような場合は、『日常生活自立支援事業』を利用して手伝ってもらうことが可能となります。

 しかし、社会福祉協議会との契約には、手伝ってもらうことが理解でき、毎月1~2回お宅を訪問する生活支援員が何をする人間か判り、かつ顔を忘れていないこと、が必要です。契約までには専門員が何度かご本人の居場所を訪問し、サービス内容をご本人と相談するなどして契約能力の有無を判断するのです。

 具体的には、契約の際下記のような支援内容が提示されます。
  • 福祉サービスの利用に関する情報提供、相談援助
  • 福祉サービスの利用料金や、医療費、公共料金等の支払い
  • 年金や福祉手当の受領に必要な手続き
  • 日常生活に必要な費用の支払いや、預貯金の出し入れ

※買い物代行・家事代行・介護・看護・通院の付添や保証人になるといったことは、お手伝いできません。

 権利擁護・財産管理を考える際、事業の内容を理解していただければ日常生活自立支援事業は判断能力が少し不安になっても「住み慣れた地域で安心して自分らしく暮らし続けることができる」ように「本人の意思を尊重」し「利用者本位」のサービス利用を援助する有用な仕組みと言えます。

 人に金銭管理を任せるということは、なかなか簡単に承知できるものではありませんが、視力が衰えればめがねを掛け、足腰が弱れば杖をついたり車いすを使うのと同じように、サービス利用や通帳・印鑑の管理が不安と感じた際に『日常生活自立支援事業』を使うというように考えることもできるかと思います。

 また、このような支援事業を利用しておくことで、その先に成年後見制度利用が必要になった際にもスムーズに移行することが可能になるのではないでしょうか。

(一般社団法人 成年後見事務所アンカー 水谷紀子)


<参考資料>
1.平成23年度版 厚生労働白書 日常生活自立支援事業の概要より抜粋
◎平成22年3月末現在の事業実施体制
  基幹的社協  748か所
  専門員    1,247人
  生活支援員 12,504人

◎平成21年度 対象者別契約の状況(全国社会福祉協議会調べ)
対象者 認知症高齢者など 知的障害者など 精神障害者など その他
うち生活保護
契約件数 5,749 1,431 1,736 518 9,434 3,663
構成比(%) 60.9 15.2 18.4 5.5 100 38.8


2.最高裁判所公表資料(事務総局家庭局) 平成22年1月~12月成年後見関係事件の概況より抜粋
 成年後見関係事件の申立件数は、全国合計で30,079件(前年は27,397件)、前年比で約10%の増加となっています。申立件数のうちこの期間に確定した(=終局)総数は、29,982件となっています。

◎区分別件数
総数 後見開始 保佐開始 補助開始 任意後見監督人選任
認 容 却下 その他 認 容 却下 その他 認 容 却下 その他 認 容 却下 その他
29,982 23,119 37 1,650 3,102 17 281 1,135 11 87 451 10 82


3.日常生活自立支援事業と成年後見制度
法務省HP(成年後見制度~成年後見登記制度~http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html)及び
厚生労働省HP(http://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/chiiki-fukusi-yougo.html)より改変
日常生活自立支援事業 法定後見制度(補助・保佐・後見)
社会福祉法 根拠法 民   法
◎精神上の理由により(契約能力はある)福祉サービスの利用や金銭管理の適切な判断が自分だけでは難しい方 対象となる方 ◎精神上の障害により事理を弁識する能力が
不十分な方=補助
著しく不十分な方=保佐
能力が欠けている方=後見
◎都道府県・指定都市社会福祉協議会
現業員=専門員・生活支援員
担い手
機関
◎補助人・保佐人・後見人
 親族、弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士など及び法人 複数可
◎相談・申込
本人が契約(契約能力あり)
利用手続 ◎家庭裁判所に申立
 本人・配偶者・四親等内の親族・市区町村長・検察官など
 ※本人の同意:補助=必要 保佐・後見=不要
◎ガイドラインで確認
あるいは契約締結審査会にて契約能力を審査
意思能力
確認・審査
診断・鑑定
◎医師の診断書・診断書附票(裁判所の様式による)を家庭裁判所に提出
保佐・後見=原則鑑定が必要
≪方法≫
◎本人と社会福祉協議会による援助内容の相談・決定
≪種類≫
・日常的金銭管理
・福祉サービス利用援助
・書類等の預かり
援助の方法・種類 ≪方法≫
◎申立内容の家庭裁判所による審判
≪内容≫
・財産管理・身上監護に関する法律行為
・同意権、取消権
補助=申立ての範囲内の「特定の法律行為」
保佐=民法13条1項に定められた行為
後見=日常生活に関する行為以外の行為
・代理権
 補助、保佐=申立ての範囲内の「特定の法律行為」
 後見=財産に関するすべての法律行為
・契約までは無料
・契約後は利用者負担(1回1,200円平均)
費用 ・申立・登記手続・事務費用、後見人等への報酬等
(報酬は本人の財産等に応じて家庭裁判所が審判)
・生活保護受給者は公費補助
・収入に応じ段階あり
費用減免
又は助成
・成年後見制度利用支援事業(適用要件あり)
・リーガルサポート(司法書士会)による成年後見助成基金あり
参照:全国社会福祉協議会パンフレット
http://www.shakyo.or.jp/news/100517/nshien_1.pdf(解説)
http://www.shakyo.or.jp/news/100517/nshien_2.pdf(やさしい解説・ひらがな表記)

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