2000年前後の社会福祉基礎構造改革の議論の中から、今後の福祉サービスの提供が、これまでの一方的な行政による措置から、サービスの提供者と利用者が対等な立場に立った選択に基づく契約へと変わりました。
一方で急速な高齢社会を迎えて、認知症高齢者など介護の必要な方が急増し、その介護を社会連帯で支えると言う理念から2000年4月より契約に基づく介護保険が導入されました。
また、欧米先進国の動きからも、近年の社会福祉の理念による新しい権利擁護のシステムを整備する必要性にも迫られており、こうした社会的背景の中、2000年4月からこれまでの禁治産・準禁治産制度に替えて、新しい「成年後見制度」がスタートしたのです。
この介護保険制度と成年後見制度は、車の両輪とも称されています。
助成事業である「成年後見制度利用支援事業」
成年後見制度利用支援事業は、成年後見制度の普及・啓発に担う市町村の取り組みを支援するために、2001年度に創設された国家補助事業です。
当初は助成の対象を認知症高齢者だけとしていましたが、順次、知的障がい者および精神障がい者に拡大していきました。しかし、この事業は市町村の任意事業であったことから、その必要性が認識されないことも多く、財政事情なども相まってなかなか実施率が高まりませんでした。
また、助成事業を実施した市町村であっても、利用する方法は長らく市町村長申立てだけに限定されていました。しかし、各方面からの要望[1]もあってようやく2008年には限定が外され、さらに2010年12月の障害者自立支援法改正の成立時には、市町村の任意事業から必須事業(2012年度から)へと格上げが決まりました。
もう一つの“両輪”
新しい成年後見制度と言っても、民法を改正して整備された制度なので、その土台および柱は、旧制度の禁治産・準禁治産制度を引継いでいます。法律の関係者からはよく「財産管理の制度」と聞かされました。それは、立法過程[2]や国会での議論[3]を読むと伺い知れるところです。
また、2010年10月に示された東京家裁の報酬のめやす[4]などを見ると法務当局の考えが一層明らかになります。こうした中で、資力が乏しくとも成年後見制度が使える政策的担保は、成年後見制度利用支援事業が担っている状況です。
その意味で私は、「成年後見制度」と「成年後見制度利用支援事業」は、もう一つの“両輪”であると考え、そのように呼んできました。
これからは
私は長いこと福祉事務所で生活保護の仕事に従事してきました[5]。最初の後見人受任は、2002年ですが、その時から問題意識は次のところにありました。
(1)これまでのように資産のある方のための単なる財産管理の制度か
(2)それとも判断能力の不十分な総ての方の権利擁護、契約支援の制度か
当然後者の立場から、成年後見制度利用支援事業を重視し、その拡大[6]や柔軟な運用[7]を求めてきました。2012年度からは、総ての市町村の必須事業となりますので、これからはその運用を注視していきたいと思います。
また、2011年6月には老人福祉法の改正があり、国は市民後見人の養成[8]にも踏み出しました。私たちは、法人後見を行う特定非営利活動法人 「よこはま成年後見 つばさ」(認証申請中)を立ち上げます。法人後見の分野は市民後見人養成よりもっと遅れています。助成事業という財政面と同時に、これからの後見業務を担う人材の育成面についても引き続き取り組んでいきたいと思います。
追記
2011年9月3日(土)、「神奈川新聞時流自流 かながわこの人が語る」で、私のインタビュー記事[9]が掲載されました。
「等しく権利を守れ」「財産に関係なく、生活の質を高めたい」
生活保護の仕事に従事してきたそれへの思いと、現在取り組む後見業務を重ね合わせ、これから始める法人後見への期待を込めています。
こちらもぜひお読みください。
[注釈]
(一般社団法人 成年後見事務所アンカー 須田幸隆)


