インターネット福祉相談の実態に関する研究

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はじめに

 平成16年度版情報通信白書1) によれば、平成15年末における日本でのインターネット人口は7,730万人、人口普及率は6割を超えると言われる。このことはユビキタス社会2) の実現、すなわち、情報通信技術を活用し「いつでも、どこでも、誰でも」がネットワークにつながることで多様なサービスが提供され、生活の豊かさの向上や社会上の問題の軽減等を可能にする社会3) が、現実化されつつあることを示唆している。

 社会福祉領域でもインターネットをいかに活用するかについては検討課題とされており4) 、中でもインターネット福祉相談は、インターネットを通じて生活問題を抱える人々のneedsを理解し、その問題解決に向けた相談支援を行う新たな社会資源として位置付けられる可能性を持つ。

 しかし今まで、心理学や医療・看護領域では、インターネットを利用したカウンセリング5) や医療相談に関する概要6) 、実施上の安全性や信頼性7) 、利用効果の検証8) 9) 等の諸研究は行われているものの、インターネット福祉相談についての論考は少なく10) 、実態は未だ不明瞭のままである。

 そこで本研究の目的は、筆者らが携わる任意団体Welfare-net21でのインターネット福祉相談室を事例に、インターネット福祉相談の実態を明らかすることにある。具体的には、インターネット福祉相談がいかなる試みを行い、どのような課題や可能性があるかを調査する。

Ⅰ 対象と方法

 本研究は、任意団体Welfare-net21の主催するインターネット福祉相談室を対象にした事例研究である11) 。上記対象を選定した理由は、第一に、本対象は1998年よりインターネット福祉相談室を実施しており、常に先駆的な取り組みを模索し試みていること。第二に、相談領域が単一領域に特化せず、多様な領域を網羅していることである。この理由から、各種領域に携わる実践家に対し多くの示唆を与え、新たな実践の可能性を模索するのに適切な対象と判断した。

 調査方法は、まず、インターネット福祉相談室の概要と機能を調査し、次に2004年2月から8月までに寄せられた相談状況についての数量的調査を行った。さらに任意に選定した相談事例についての考察を行った。なお本論で扱う事例については、当事者の了承を得て内容はできるだけ忠実に記述しているが、倫理的配慮により対象者本人が明らかになるような記述があるものについては、変更を加えている箇所も存在する。

Ⅱ 結果

1.Welfare-net21によるインターネット福祉相談室

(1)インターネット福祉相談室の概要

 任意団体Welfare-net21によるインターネット福祉相談室は1998年に開設された。開設当初は筆者を中心とした数名で相談事業を行っていたが、年々相談員の増員や相談システムの改善等により、相談室の規模・機能を拡大していった。そして2004年2月には、福祉・介護・医療分野のソフト開発会社wel.ne.jp(日本コンピューター株式会社)の協力により、相談室のシステム・デザイン(図1)・管理等を大幅にリニューアルしたことで、相談室の機能がさらに拡充した。

(2)相談室の内訳

 インターネット福祉相談室は、表1に示すように9領域全26の相談室に分類される。

(3)相談員

 相談員は、全国の社会福祉士を中心とする全29名(延べ71名)12)で構成され、各分野に精通した相談員を適宜配置している。各相談室には、ほぼ複数の相談員が設置され、利用者は、相談員のプロフィールを参考に、自らが希望する相談員を選択することができる。

図1.welfare-net21 ホームページ

<参考>welfare-net21のインターネット福祉相談室相談員(28名)

代表:須田幸隆(社会福祉士)
伊藤康恵(社会福祉士) 荒木昭雄(社会福祉士) 緒方健一(社会福祉士) 鷲見 修(社会福祉士)
花輪祐司(社会福祉士) 古畑英雄(社会福祉士) 榊原聡実(社会福祉士) 宮澤法子(社会福祉士)
高木知里(社会福祉士) 芥川恵子(社会福祉士) 辻田恭子(社会福祉士) 蛯原 勝(社会福祉士)
村内麻里奈(社会福祉士) 中村雅彦(社会福祉士) 大橋英理(社会福祉士) 畠山直己(社会福祉士)
吉田八重子(社会福祉士) 田辺由美子(社会福祉士) 木本 明 (社会福祉士) 菅野善也(社会福祉士)
上西尚登(社会福祉士) 榎尾郷子 (社会福祉士) 佐々美弥子(社会福祉士) 宮川直彦(社会福祉士)
木野田直泰(社会福祉士) 石田英一郎(介護支援専門員・介護福祉士・受験生) 西田ゆかり(受験生)

表1.インターネット福祉相談室

1.社会福祉士受験関係 (1)受験資格
(2)受験資格取得方法
(3)社会福祉士受験学習上の悩み・不安
(4)専用ML・受験体験記
2.高齢者関係 (5)介護について
(6)介護保険制度
(7)ケアマネの上手な使い方
(8)上手な制度利用(高齢者)
3.障がい児・者関係 (9) 上手な制度利用(知的障がい児・者)
(10)上手な制度利用(身体障がい児・者)
(11)支援費制度
4.児童関係 (12)子育て支援について
(13)上手な制度利用(児童)
(14)児童虐待
5.地域福祉・成年後見・生活全般等 (15)地域福祉・ボランチィア・NPO
(16)新しい成年後見
(17)生活全般
6.小中高生支援 (18)福祉の仕事
(19)福祉の資格
(20)進路
7.よろず相談 (21)ひきこもり
(22)ワーカーとしての自分
(23)福祉用具取扱
(24)医療費助成制度
8.ピアサポート (25)ピアサポート全般
9.事務局 (26)苦情・提案・協力

2.インターネット福祉相談室の機能

(1)SSLの採用

 本相談室では、通信の際に、SSL(Secure Socket Layer)13) を採用している。そのため、相談及び回答は全て暗号化され、送受信される。

(2)E-mail機能からWeb機能へ

 本相談室は、従来のE-mail機能を利用した相談システムに替わり、非公開掲示板方式を採用した。この非公開掲示板方式とは、相談をE-mailではなくweb上で行うことを特徴とする。詳述すれば、まず、利用者が相談員を選択し、ホームページ上の相談フォームに相談内容等を入力し送信すると、web上に、利用者個人の相談ファイルが作成され、同時にURLと相談ID、パスワードがメールで知らされる。そして相談員には、新規相談を通知するメールが届き、同メールに記されたURLにアクセスし、自己のユーザIDとパスワードでログインすれば、相談の閲覧および回答の記入が可能となる。相談員が回答入力後送信すると、利用者には、メールで回答のあったことと再度URLとID、パスワードが通知され、それらを入力しログインすることで回答の閲覧が可能となる。

(3)新たな形式での継続相談

 この非公開掲示板方式の採用により、新たな形式での継続相談が可能となった。例えば、利用者が再度、同相談員に相談したい場合、従来までは再び新規に相談員にアクセスし相談を行わなければならなかったが、上記方式によれば、以前に作成された相談ファイルが記録として継続利用できるため、利用者は、前に利用したURLにアクセスすれば、相談を改めて説明し直す必要もなく継続相談ができ、他方、相談員にとっても、利用者が、前にどのような相談をしてきたかを同web上で確認しながら回答することができる。

(4)助っ人機能の導入

 この相談室では、利用者が複数の相談員から助言を得られる「助っ人機能」を取り入れている。「助っ人機能」とは、相談の過程で他の相談員の意見(他領域、セカンドオピニオン等)を聞く必要が生じた場合、利用者の合意のもとで、登録されている他の相談員を呼び込むことが出来る機能である。

3. インターネット福祉相談室の相談状況

(1)相談件数

 調査期間内に寄せられた相談は表2のように計272件あり、月別平均相談件数は38.85件であった。

(2)相談室別相談件数

 上記を相談室別に見ると、表3のように高齢者関係の相談が最も多く(97件、35.66%)次いで、社会福祉士受験関係(75件、27.57%)、障がい者関係(28件、10.29%)の順に多く寄せられている。

表2.月別相談件数

2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月
件数 43 35 41 48 42 33 30 272

表3.相談室名別 相談件数 (2004.2~8)

相談室名別 件数(%)
1 高齢者関係 97(35.66)
2 社会福祉士受験関係 75(27.57)
3 障がい者関係 28(10.29)
4 地域福祉・成年後見・生活全般等 18(6.62)
5 よろず相談 17(6.25)
6 小中高生支援 13(4.78)
7 児童関係 10(3.68)
8 事務局 10(3.68)
9 ピアサポート 4(1.47)
272

Ⅲ 考察

1.相談室の概要からみるインターネット福祉相談の課題と可能性

(1)プライバシー、セキュリティーに対する倫理的課題

 従来型のE-Mailをベースとした相談システムでは、コンピュータウイルスへの感染やアドレスの入力間違い等により、プライバシー情報が第三者に漏洩する危険性があった。McCarty,D. and Clancy,C.によれば14) 、テレヘルスは、プライバシーに関する前例のない問題が生じる危険性があると警告する。また同時に、完全に安全なテレコミュニケーションは存在しないと指摘する。このようなセキュリティーやプライバシー保護に関する倫理的問題は、分野を問わず重要な検討課題である。この限界に対し、本相談室にみるように、非公開掲示板方式の採用15) 、SSLによる情報の暗号化、回答作成者の本人確認と回答内容の改ざん防止のための電子証明等を採用し、情報の機密性を保証する方策を出来る限り検討することは、課題克服のための一つの手がかりとなろう。

(2)「メタコミュニケーションの不足」による困難

 相談の多くは一往復か二往復で終了することが多い。これは、武藤16) が指摘するような「メタコミュニケーションの不足」、すなわち言語的メッセージの内容を規律する気持ちや態度、ボディーランゲージなどの非言語的なコミュニケーションの側面が見えにくいというインターネットのもつシステムの限界によるものが大きいと考えられる。しかし、本相談室に寄せられる相談の中には二十往復に至るようなやりとりや後述の事例のように相談が長期化するケースもある。これは、匿名性、すなわち肩書きにとらわれないで一個の個人として自由にふるまえる17) ことや、いつでもどこでも気軽に相談ができるという利便性18) 19) が作用した結果と考えられる。また、本相談室では利用者が自分の希望する相談員を選択できる。このような自己選択の尊重は、利用者と相談員との信頼関係の構築や利用者の自己開示を促し、利用者の情緒的支援につながる可能性がある。

(3)セカンドオピニオン、チームケアを利用した相談支援

 「助っ人機能」を導入することで、複数の相談員によるセカンドオピニオンあるいはチームケアが可能になる。今までにも、複数が相談に参加できる手段として、(公開)掲示板やメーリングリスト(ML)が利用されているが、その際メンバーは、(公開)掲示板のように不特定多数である場合や、MLのようにメンバーがあらかじめ固定化された形で進められることが多い。しかしこれらの場合、極めて個人的な問題を扱う際に、状況に応じたメンバー再編が難しいという限界をもつ。

 そこで、本相談室の「助っ人機能」を用いると、相談員が利用者との合意のもと、状況に応じて相談員を増員できる。そのため、利用者は、自分が希望する複数の専門家から助言を受けられ、情報的支援ならびに情緒的支援を受けられることになる。

 また、本論では詳細は述べず別稿に譲るが、「助っ人機能」を利用し、成年後見業務に関するケースカンファレンスを試験的に実施したところ、利用者は情報的支援が得られ、結果的に実践場面において利用者及び当該福祉制度利用者の意に沿う大きな成果をおさめた。このことは「助っ人機能」を用いたケースカンファレンスの実現可能性を示唆するものであり、今後もより多角的な「助っ人機能」の利用が期待できる。

2.実例からみるインターネット福祉相談の課題と可能性

 以上のように、インターネット福祉相談室の概要をもとに今後の課題と可能性が考察された。

 そこで次に、実際の相談事例をもとに、先述の考察をさらに検証する。本事例20) は、一人の相談員では対応困難なケースで、かつ相談内容が経時的に変化するという特徴が見られた。そこで、利用者の相談needsに対応するため、利用者の合意のもと、二名の相談員を随時増員・再編し、相談機能を強化することでチームケアによる相談支援を可能にした一例である。

(1)相談事例

[1-0]利用者:2004年4月28日
「在宅介護支援センターで勤務を始めますが、何から勉強すればいいですか?本はどのような本がいいですか?」

[1-1]相談員T:2004年4月28日
「もう少し詳しくお話を伺えたら幸いです。そして継続して相談していけたらいいですね?貴方の採用先の上司の方が指導するかもしれないですし・・・私だけの考えでお答えできない部分もあります」

(専門職からの相談のため、以下より利用者了承の上、相談員Sを追加する)

[1-2]相談員S:2004年4月29日
「入職前の不安、未知の世界への不安は誰にでもあるものです。緊張感でしょう。まあリラックスしてください。日ごとに新しい環境に慣れますよ」

[1-3]利用者:2004年4月29日
「また報告します。よろしくお願いします。」

[1-4]相談員T:2004年4月29日
「1日の流れ、1週間の流れ、そんなところからスタートですね」

[1-5]利用者:2004年4月29日
「ケアマネさんとの同行訪問でした。(以下省略。職場での仕事内容についての報告に関する記述)」

[1-6]相談員T:2004年4月30日
「1日1日の積み重ねですから頑張ってくださいね」

[1-7]利用者:2004年5月1日
「突然こんな話をしていいものか迷いましたが、悩んでおり相談させてください」「○○歳の時に突然病気を発症しました」「以前の職場では体がついていかず辞めなくてはならなくなった」、「やっと相談職として採用になったのだから今回は辞めたくない」、「うまく隠して仕事をつづけたい」、「同行訪問時にはミニクッションを使いたい」

[1-8]相談員T:2004年5月3日
「クッションを使う件については問題ないのではないか」、「上司の方に相談できないだろうか」

[1-9]利用者:2004年5月3日
「前職の経験から上司には言いたくない」「だがクッションは使いたい」

[1-10]相談員T:2004年5月4日
「上司の方にすべてを言うのではなく、味方を作るつもりで膝が悪いことを説明してはどうか」
「無理すれば後で体に来てしまうかもしれない」
「人間にはどうしようもないことがある。それをどう受け入れいくのかが大事です。」「長い目でみてゆっくり進んでください」

[1-11]相談員S:2004年5月4日
「病名は言わないがクッションの使用についてはちょっと先方にお断りする」「しかし、上司に病気の事を話さなければならない時が来るかもしれません」「病気を理解してくれる職場、そうでない職場」「障害や病気のある人には避けて通れない問題」「必要な時、必要なだけ話せばいい」「先のことを心配せず、今を明るく生きていきましょう」

(以下より、利用者了承の上、ピアサポートを担当する相談員Iを追加する)

[1-12]相談員I:2004年5月5日
「病気を理解してくれる職場、難しい問題ですね」「すべてを話す必要はないように思います。ただ、お仕事をなさっていくうえで、これはつらい、と言う事は折をみてお話されてもと思います」「職場の上司の方でなくても、同僚の方にちょっとずつ小出しに・・・というのもひとつの方法ですね」

[1-13]利用者:2004年5月23日
「病気や障害を持ちながら普通に働いている方は本当に強いと思います」「私は自分のこととなると全くだめです」「<必要なときに必要なだけ話せばいい>この言葉にホットしました」「こんなんで相談員として働いていけるのか分かりませんが・・・・これから学んでいきたいです。ありがとうございました」

以下省略。その後本事例は、2004年11月8日まで継続し、一月に1回程度のやりとりがある。

(2)相談事例の検討

(i)情報的支援と情緒的支援による相談効果
[1-0]は、明日から在宅介護支援センターに勤務するという方からの相談である。ここでは、新たな職場で働くために必要な情報を得たいとする福祉情報に関する内容が相談の中心である。相談員Tは[1-1]で、「メタコミュニケーションの欠如」から、さらに詳しい説明を依頼し、また、必要な勉強については職場により様々であることから、具体的な情報的支援は困難であることを告げる。そこで相談員Tはこの限界に対して「助っ人機能」を利用し、相談員Sを参加させることで相談の継続を試みようとする。一方、動員された相談員Sは情緒的支援を中心に助言を行った結果([1-2])、利用者からは今後も継続相談を希望する返答が寄せられた([1-3])。

 以上の事例やⅢ-1-(2)に見るように、インターネット福祉相談では、「メタコミュニケーションの欠如」により問題把握に困難を要する場合が少なくない。しかし本事例では、相談員を追加し、支援方法を情報的支援から情緒的支援へとシフトさせる事で相談の継続を可能にしている。

(ii)利用者の自己開示21)
[1-4]、[1-6]のように情緒的支援を継続した結果、利用者は自分自身の病気についての自己開示をし始める([1-7])。実際にインターネットセラピーに携わる田村によれば22) 、インターネットでは、自分の気持ちをさらけ出して相手に語ることが想像以上に容易になると述べる。すなわち、インターネット上のやりとりは、匿名性とあいまって自己開示が促進されるというのである23) 24) 。本事例においても、このようなインターネットのもつ匿名性と相談員による情緒的支援の継続によって、利用者の自己開示が促されたと考えられる。

(iii)「ピアサポート的相談」の有効性
[1-13]では、ピアサポートのできる相談員Iが参加したことによって、利用者の自己開示がさらに促進され、「ホットしました」、「こんなんで相談員として働いていけるのか分かりませんが・・・・これから学んでいきたいです。」と安心感や職場への意欲が感じられる言葉へと変化している様子が見て取れる。この変化は、今までの相談員TやSの支援に加えて、同じ経験をしているという同等性25) を基礎にする相談員Iの助言が加わったことが、利用者の内的変化の契機になったと思われる。今までにも掲示板やメール、チャット等インターネットを利用したセルフヘルプグループについての有効性が示されているが 26) 27) 、本対象における「ピアサポート的相談」についても同様に、利用者の内的変化を促す可能性が示された。

おわりに

 社会福祉士が関わる実践場面において、IT技術をいかに活用するかは重要なテーマである。そこで本研究では、welfare-net21が実施するインターネット福祉相談を事例に、web機能を導入したインターネット福祉相談室の概要と、組織的な福祉相談の取り組みを紹介した。上述の結果からは、相談を実施するにあたり、利用者のプライバシーやセキュリティーの問題、実践的介入への権限がないこと、face to faceではないことによる「メタコミュニケーションの欠如」の問題等、先行研究で言われるようなデメリットや課題が改めて確認された。しかし一方、コンピュータシステムを駆使したセキュリティー対策や、情緒的支援の継続と「ピアサポート的相談」による自己開示の効果、また、チームケアおよびチームカンファレンスの有効性など、今後の可能性が明示されている。

 インターネット福祉相談は、現時点では、地域の福祉相談機関に出向く前の適切な社会資源の紹介、地域相談機関への相談前後のアドバイスをはじめとする情報的支援と利用者への情緒的支援を主とする社会資源として位置づけられるが、今後のIT技術の多様な機能(例えばIPTV、IP電話等)を応用しながら、一層発展していくことが期待される。すなわち、インターネット福祉相談はユビキタス社会における新たな実践の可能性を秘めていると考える。

 しかし本研究は、あくまでもwelfare-net21のインターネット福祉相談の概要をもとに、インターネット福祉相談の課題や可能性の一端を示したにすぎない。今後は、分野別による相談の内容分析や、同種機関との比較研究等を通じてさらなる検討が求められる。これについては今後の残された課題である。

 最後に、私たちは社会福祉士の本来業務である福祉相談を地道に積み上げ、次のような目標を達成したいと願っている。
①市民からの具体的な福祉相談に応えることによって、その人らしい生活を支える
②福祉相談実践を通して、地域福祉への貢献、社会福祉士の社会的認知向上に努める
③社会福祉士国家試験の受験生支援を通して将来の社会福祉を担う人材の育成に寄与する
④民間会社と連携し福祉相談におけるIT技術の高度利用、より利便性の高いシステムの開発を目指す

終わりに、welfare-net21の礎を築いたwelfare-net21の名誉会員である故高橋邦彰氏のご冥福を心より祈念する。


1)総務省(2004)「平成16年PDF版 情報通信白書」(
http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/whitepaper/ja/h16/index.html,2004.11.25)

2)ユビキタス社会については、坂村健『ユビキタス・コンピュータ革命』(角川書店,2002年)に詳しい。

3)総務省,前掲1),2ページ。

4)社会福祉分野でのインターネット利用に関する研究は、福祉の情報化に関する研究あるいは社会福祉情報論の領域に位置づけられる。詳しくは、岡本民夫他『福祉情報化入門』(有斐閣,1997年)、森本佳樹『地域福祉情報論序説』(川島書店,1996年)、生田正幸『社会福祉情報論へのアプローチ』(ミネルヴァ書房,1999年)を参照。

5)小坂守孝「電子メールによる心理援助サービスの実践的研究」『コミュニティ心理学研究』1,(2),1997年, 187~208ページ。

6)沼部博直・星加明徳「遺伝医学ホームページに寄せられた電子メールの内容の検討」『小児保健研究』61,3,2002年, 496~502ページ。

7)辰巳治之他「患者・家族におけるインターネット上の医療(健康)情報の利用状況と意識に関する調査」『インターネットを活用した医療施設情報の提供と利用の促進及び安全な医療情報流通促進のための個人情報の取り扱いに関する調査研究』平成13年度厚生科学研究(医療技術評価総合研究事業)2001.

8)安川一・安藤太郎(2002)「オンライン・セラピー~メディア媒介的な社会的サービス活動の性格と課題」『200年度財団法人大川情報通信基金研究助成報告書』(http://ofc-hjm.misc.hit-u.ac.jp/hjm/MyDesk/Bib/2002a.html,2004.11.25)

9)毛利瑞穂「摂食障害の危険因子を減らせるカーインターネットによる心理教育プログラムー」『NEW教育とコンピュータ』学習研究社,17(2),2001年,116~117ページ。

10)日本では少ないものの、アメリカのソーシャルワーカーが実施するテレヘルスに関する研究については、Giffords E,“Social Work on the Internet An Introduction”SocialWork,Vol.43,3,1998,pp.243-251.や、McCarty D, Clancy C, “Telehealth: Implication for Social Work Practice”Social Work,Vol47,2, 2002,pp.153-159.や、Sarrazin M, et.al. “A Comparison of Computer-Based Versus Pencil-and-Paper Assessment of Drug Use”Research on Social Work Practice. Vol.12,5, 2002,pp.669-683.等がある。

11)事例研究には(1)少数のケースについて奥深い分析が可能、(2)実態や因果関係について全体像を提供することが可能、(3)時系列的・歴史的な動きや変化を捉えることができるなどの長所がある。詳しくは吉原秀樹『戦略的企業戦略』(東洋経済新報社,1986年,19ページ)を参照。本研究では、稀少であるインターネット福祉相談の実態と、その時系列的変化を明らかにすることを目的としていることから、事例研究による方法を採用した。

12)相談員については、社会福祉士以外に福祉士受験予定者、その他福祉関連資格者が含まれる。

13)SSL(Secure Socket Layerの略)とは、暗号化のプロトコル(通信規約)で、大切なデータをやり取りするときに安全を確保するための技術である。

14)McCarty, D., Clancy, C.,前掲書10), 153ページ。

15)非公開掲示板へのアクセスにおいては、本人以外は知ることのできないID・パスワードの入力を必須としている。このID・パスワードは、万全を期すために相談の都度ランダムに割り当てている。

16)渋谷英雄他「インターネットにみる心の世界」『現代のエスプリメールカウンセリング』418号,至文堂,2002年,12ページ。

17)川浦康至「インターネットで試す心、試される心-インターネットの社会心理」『現代のエスプリメールカウンセリング』418号,至文堂,2002年、72ページ。本論では、匿名性をインターネットのメリットとして位置づけているが、川浦は、「匿名がもたらす心理的効果は一律ではない。その人が置かれている状況など社会的な条件次第でポジティブにもネガティブにも作用する」として両義的な性質を伴うとされる。

18)渋谷英雄他,前掲書16),12ページ。

19)安川一・安藤太郎, 前掲書8),9ページ。

20)現在、本相談室は福祉制度の利用者のみを対象にし、専門職(福祉従事者)からの相談は原則として受けていないが、今後、専門職(福祉従事者)へのスーパービジョンも必要な支援になると考え、相談支援に至ったケースである。

21)自己開示とは「個人を他者に知らせる行為であり、相手にわかるように自分自身をあらわにする行為である。つまり自分がどんな人物であり、いま何を考え、何を感じ、何を悩み、何を夢見ているか、などを相手に伝えることである」という。詳しくは、榎本博明『自己開示の心理学的研究』(北大路書房,1997年)を参照。

22)田村毅, 『インターネットセラピーへの招待』,新曜社,2003年,67ページ。

23)武藤清栄「電子メールの表現とコミュニケーション-非言語と病理の読み取りを中心に」『現代のエスプリメールカウンセリング』418号,至文堂,2002年,48~49ページ。

24)川浦康至、前掲書17),69ページ。

25)安川一・安藤太郎, 前掲書8),49ページ。

26)田村毅「メーリングリストによる自助グループの試み」日本社会精神医学会第22回大会,1998年.

27)川村渉「インターネットにおけるセルフヘルプグループ」『現代のエスプリメールカウンセリング』418号,至文堂,2002年,84~92ページ。

謝辞

 本研究にあたり御協力頂きましたwel.ne.jp(日本コンピューター株式会社)に対し、この場をかりて深く感謝申しあげます。

※この論文は、平成17年3月発刊の日本社会福祉士会編集:研究誌「社会福祉士」に掲載されたものです。