障害者支援費制度は何処へ・・・

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0.コラムへの視点

 平成16年10月12日社会保障審議会・障害者部会において、「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」が厚生労働省により示されました。

 社会保障審議会・障害者部会では、春から、支援費制度の財源確保に向けて、障害者施策と介護保険制度の関係を議論してきました。しかし、施策検討のあり方として財源のために議論をするのみではなく、障害者施策の将来を示し、その結果として、介護保険制度の活用が有効か否かを議論するべきとの意見が出されました。そして、今回のグランドデザイン案が提示されました。

 これだけ施策が急変する時代に、一職員として関われたことは“幸運”と考えるべきと思います。しかし、障害者や家族に直接接する市町村の職員としては、これだけの改革を数年の間に幾度も実施すると、障害者及び家族や関係者が混乱し、迷い、如何したら良いのかわからない状況に陥っていくのが容易に想像されます。もっとも、市町村の職員も同様に混乱し、どのように対応すべきか具体的なイメージすら思い浮かばない状態になるかとも思います。

 その中で、平成15年4月施行の支援費制度の状況と今回示されたグランドデザイン案に少し触れ、関係者の疑問解決への糸口が見つかればと思います。

 時は平成15年4月、社会福祉基礎構造改革が施行され、当事者の“自己選択と自己決定”の理念のもと、支援費制度が誕生しました。基本的な理念に反対する人はありませんでした。そして、これから障害者(身体障害者及び知的障害者)は、自分が希望する生活を公的サービスにより安心して継続して使える世の中になることを半信半疑で描いたと思います。

 しかし、支援費制度は、理念に基づいてのことか、当事者の責任において“自分の事は自分で”という考え方がありました。

 例えば、支援費制度の在宅サービス利用者負担額は、上限額(通所施設の利用者負担額と同額)を設定し、「サービスを使った順番に記録し、上限に達したらもう負担額を取らない。」との扱いになっています。その管理の方法は、事業者がサービス提供した順番にそのサービス内容により算定した利用者負担額を管理表という手帳に記載し、上限に達したら、その後のサービスを提供した事業者は、利用者負担額を取らないとしています。サービス提供がひとつの事業者ならば単純な話ですが、ホームヘルプ事業者を数社から派遣してもらったり、ホームヘルプとデイサービスと短期入所といった複数の在宅サービスを組み合わせて利用する場合などを考えると、事業者の記載に誤りは起こらないだろうか、当事者や家族はきちんと確認できるのだろうか、といった心配もありました。しかし、障害者や家族、事業者の間で運用が可能との判断で制度が始まりました。また、制度開始当初の予算状況からして、「必要以上にサービスは使われない。」「支援費制度の施行に伴っていきなり爆発的にサービス量が伸びるなどということは無い。」との想定だったのか、確保された予算を大幅に超えた状況となったことは周知のことです。

 そして、支援費制度施行1年半後に「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」が示され、その文章の中から「支援費制度」という文字は消えてしまいました。

1.支援費制度の現状

 今回の支援費制度の現状の舞台となる横浜市を統計数値で紹介します。

人口 約 350万人
世帯数 約 150万世帯
一世帯あたりの人数 約 2.4人


1日の統計

出生者数 92.3人 死亡者数 58.3人
結婚 66.6組 離婚 22.0組
市外への転出 403.2人 市内への転入 461.0人

身体障害者数 約 83,000人
知的障害者数 約 14,000人
精神疾患を有する人の中で
何かしらの医療・福祉サービスを利用している人
約 43,000人

皆さんは横浜市の障害福祉をどのように思いますか。

 規模が大きい。財政力もある・・・あると思う。故に障害福祉もそこそこやっている。グループホーム(平成16年度予算:276か所)や地域作業所(平成16年度予算:170か所(内33か所は小規模通所授産))の数は多いと聞いている・・・重症心身障害者の通所施設(種別では知的障害者通所更正施設)もある・・・自閉症に関する支援に頑張っている施設がある・・・親亡き後条例を制定した・・・等々。

〔参 考〕

 昨年度策定した「横浜市障害者プラン」の際に実施したアンケート調査の結果の一部を紹介します。

 質問は、施策や各サービスについて、現状を過去と比較した評価と、現状を将来と比較した評価についてです。

 その結果、「暮らしやすさ」の全体の評価としては、「これまでよりは良くなっているが、現在の状況には満足できる状況ではなく、将来についても不安である。」との評価となっています。

 また、身体障害者と知的障害者を比べると、「行動範囲の拡大」「在宅生活支援」「医療」分野は共通に現状の評価は高いが、「雇用の促進」は共通に評価が低く、障害別では、身体障害者は防災、まちづくり、手当等で、知的障害者では教育、放課後対策等の学齢期の児童に関わる分野と住まいについて評価が低い結果となりました。

 なお、将来への不安については、昨今の社会経済状況を反映して、「雇用の促進」「年金・手当等」で不安が大きいことがうかがえました。

 また、施行開始直後の「支援費制度」について、身体障害者は「現行の評価は低いが、過去に比べてよくなった」と評価され、知的障害者は「現状の評価も低く、過去に比べても悪くなった」と評価されました。

 結果としては、現状を過去と比べれば良いと思える部分もあるが、将来的には非常に厳しいという評価を頂きました。

 ここで、横浜市が実施した支援費制度の状況を説明します。

 支援費制度発足当初、利用者は約7,700人(在宅サービス:約4,300人 施設サービス:約3,400人)となっていて、1年間で約8,500人(在宅サービス:5,100人 施設サービス:約3,400人)となり、1割の増加となっています。

 内訳で見ると、ハード(施設等の建物)の整備が必要なサービスは、ハードの整備が進まないと増加しないので、施設サービスはあまり増加しない結果となっています。

 ただし、いままでの横浜市内では、デイサービスは障害者地域活動ホームという地域の活動拠点のみで実施していましたが、支援費制度が施行されてから、事業者が独自で設備や運営の基準を整えて、デイサービスを実施する事業所が出現しました。今後もデイサービスについては、民間による事業展開が期待できると思います。

 また、短期入所事業については、日中の預かりとしての短期入所や通所系施設の事業が指定基準の変更に伴って増えてきている状況があります。もっとも、この事業の利用が集中する、学校の休みの時期のニーズへの対応には、まだまだ課題は残されたままです。

 次に、財源問題の渦中となっている居宅介護事業ですが、18.7%の伸びとなっております。約2割の増加が多いのか少ないのかについては、過去3年間のホームヘルプ事業の増加率を見ると、支援費制度開始以前である平成14年度から平成15年度は17.2%の増加、平成13年度から平成14年度は25.6%の増加、平成12年度から平成13年度は35.6%の増加となっており、どちらかと言うと、伸び率は減ってきていて、安定化傾向を示すのではないかと思われます。居宅介護事業は、知的障害者へのサービス提供とともに、移動介護については社会参加への利用も認めたことにより、サービス量が大幅に伸び、事業費の増加を招きましたが、地域では障害者本人が家族以外と外出している光景をよく見かけることになったと思います。

1.平成15年度利用推移(平成16年6月請求データ)

(1)利用者数

平成15年度利用推移(平成16年6月請求データ)利用者数

※居宅介護の人数は実数。身体介護、家事援助、日常生活、移動介護の合算値(延べ人数)ではない。

※平成16年3月の数値については、事業者からの未請求があるため、確定値ではない。

平成15年度利用推移(平成16年6月請求データ)利用者数グラフ

(2)利用時間、日数

平成15年度利用推移(平成16年6月請求データ)利用時間、日数

※平成16年3月の数値については、事業者からの未請求があるため、確定値ではない。

2.平成15年度利用状況(平成16年6月請求データ)

(1)利用人数

平成15年度利用状況(平成16年6月請求データ)利用者数

(2)利用時間

平成15年度利用状況(平成16年6月請求データ)利用時間

※平成16年3月の数値については、事業者からの未請求があるため確定値ではない。

3.事業者指定状況

事業者指定状況

2.支援費制度の評価

 支援費制度は社会保障審議会・障害者部会では、悪い制度と言われています。

 それは財源が確保できないことや、障害者個人個人を支える仕組みづくり(ケアマネジメント体制)が未整備のまま走り出した結果、課題として浮かび上がったと考えられます。

 厚生労働省では、支援費制度が始まった平成15年の年末に「サービス利用が思った以上に伸び、在宅サービスの事業費が不足する。」と公表し、事業費確保に奔走し、その結果、多くの市町村にほぼ100%(居宅介護は約9割)の国費を配分することができました。そして、平成16年度も280億円程度が不足すると言われております。不足額の理由は、ホームヘルプ、ガイドヘルプの居宅介護事業及びデイサービスの利用者の増加が見込みを超えているからであるとのことです。

 厚生労働省が公表した平成17年度予算案については、前年度(602億円)の54.5%増の930億円が計上されました。全体予算から判断しても、厚生労働省所管課の頑張りはものすごいものがあったと思います。確保できた理由として、数値目標をもった事業計画、サービス決定の透明化、利用者負担の応益化等によるものとの説明がありました。

 しかし、実質の伸び率からすると1千億円を超える事業費が必要と考えられ、現行の制度内容のままでは財源が確実に確保できたとは言えないと思います。

事項 平成16年度
当初予算
平成17年度
予算(案)
差引
増△減
対前年度
増△減
居宅生活支援費 602 930 328 54.50%
施設訓練等支援費 2871 2901 30 1.04%
3473 3831 358 10.30%

 ここで、居宅介護事業に絞って支援費が、どのくらいかかるかをシミュレーションしてみます。

【事例1】
全身性障害者が24時間常時介護を必要として、日常生活支援でホームヘルパーの派遣を行った場合の1か月の支援費
約 170万円(1か月利用時間:居宅介護 日常生活支援 720時間)

【事例2】
1日の中で、身体介護を4時間、家事援助を2時間でホームヘルパー派遣を行って場合の1か月の支援費
約 67万円(1か月利用時間:居宅介護 身体介護124時間  家事援助62時間)

事例2の図

 しかし、支援費制度の良し悪しの議論を財源問題に限って議論して良いのでしょうか。制度の“自己選択と自己決定”という理念は、従来の措置の考え方である、行政が利用者の希望を取らずともサービスの内容や予算の範囲でサービスの量を決めるという考え方と比べると、はるかに地域での生活を実現できる環境となったと思います。

 制度開始当初は、制度の取り扱いが変わったり(各市町村が運用で違った取り扱いをしていたためによる変更等)、「契約」という仕組みの馴染みがなく、混乱したりといろいろありましたが、制度が施行されて1年経つうちに、利用者が、上手に制度を使いこなす術を身に付けてきたのではないでしょうか。例えば、デイサービスの利用についても、週のうち何日かは、プログラムやスタッフの対応が違う別々の施設を利用したり、ホームヘルプ事業についても欲しいサービスに合わせて、派遣してもらうヘルパーさんをお願いしたりとか、結構裏技的サービス利用方法が試されているようです。また、契約によるサービス提供なので、契約内容に納得できない場合や、契約内容が履行されない場合は、別の事業者に変更することが、今まで以上に容易に行えます。無論、選べるサービス事業者が数的に充足されていることが前提になるのですが。横浜市の場合では、ホームヘルプ事業については、介護保険事業者が指定を受け、約2倍の事業者数になろうとしています。その事業者も当初は、身体障害者の方への対応のみであったものが、次第に知的や移動の研修等を自社の職員に受講させ、対象の範囲を拡大し、利用者数を増やしている状況となっています。

 良い制度というものが、その制度を利用する人のためにあり、サービス提供事業所が増え、選択の幅が広がる中で、自分にあったサービスの確保が可能となり、安心して生活ができることを可能にするものであるならば、支援費制度は良い制度と言えるのではないでしょうか。

 しかし、一方で、財源を含めた事業の継続性を考えると、問題を抱えている制度と言わざるを得ないのも事実と思います。

3.支援費制度・・・障害者施策を支える相談支援事業

 そのような状況で示された改革案は、様々な思いがあると考えます。しかし、本来、事業・施策の改革は、障害者や家族の安定した生活や安心感を増すために見直しを行うもの、と考えたいものです。理念が良くても財源不足によって問題のある制度となった支援費制度。その中で新たに示されて議論されているグランドデザイン案。いずれにしても、障害福祉施策には普遍的なものがあるのではないかと思います。

 障害者や家族が日々の生活の中で支援を必要とした場合、何らかのサービスを提供できれば、全て課題が解決するのではありません。無論、サービスを利用することで、いくつかの課題が解決する場合もあるでしょう。しかし、障害を全て受容できている状況ではない中で生活していくことに対する精神的支えや、地域から受ける差別的な扱いへの思いなど、日々の生活にはサービスでは埋められない隙間に課題があり、それが不安の増幅になるのではないでしょうか。

 普遍的なものとは、障害福祉における主人公である、障害者や家族の安定した生活を可能とし、安心を実感してもらえる環境を構築することであると思います。しかし、これらを実現するためには何が必要なのかを考えると、簡単にできることではないような気がします。

 そこで、ケアマネジメントの体制を整備するという一つの施策により、“相談”でき“支援”を受けられるシステムが有効に機能するのではないかと思います。

 一言に“相談”といっても様々な内容があると思います。相談事業では、様々な相談内容をまとめてしまい、一通りの流れや一つの窓口で終わらせてしまうことがあります。これでは、日々起こる課題や不安を解消する事や、不安を解消するために話したいことを話せる相手がいる環境を構築することはできず、安心の実感を得ることは難しいのではないでしょうか。また、日常に起こる課題や不安を簡単に話せる相手が傍にいたとしても、話の内容が問題解決を伴うものであれば、その相手には、障害福祉に関する知識や経験と、課題を分析するスキルが求められることになります。

 そこで、“相談“の内容を分類してみます。

①日々起こることやちょっとした不安を気軽に話すことで解消する内容

②情報提供で済む内容

③緊急を要さないが将来的なこと等での一般的内容

④緊急的対応が必要な内容

⑤複数または複雑な課題を抱えている困難な内容

そして対応先としては、

①から③は、「身近な相談者」として、サービス提供者、通い慣れた施設などの職員、学校の教員、高齢者デイサービス等を実施している地域ケアプラザや地域作業所、グループホームといった地域の身近な施設の職員、障害者やその家族や友人等といった、日頃から顔を知っている人が考えられます。

 そして、①から⑤の全てを対応する先としては、「一次相談支援機関」として、相談支援専門の職員を配置し、情報提供やケアマネジメント等の個別的な支援を行うと共に、地域のネットワークを構築する中心的機関が考えられます。また、この機関が全ての障害に対応することは困難であることも考えられることから、「二次相談支援機関」として、重症心身障害者や自閉症等といった専門的なノウハウを持つ機関がバックアップ的機能により対応することが必要と考えられます。

 そうすると、地域の中には、様々な対応者や対応機関が存在することになりますが、どこに相談するかは、無論、障害者や家族が決めるわけで、各機関が窓口や対象者を限定することはすべきではありません。しかし、それでは専門機関に集中する可能性が当然想定できます。そこで、窓口を限定するのではなく、各機関がネットワーク(連携)を構築することで、状況や経過の中で、より身近な機関が支援やフォローアップすることで受け止める体制ができると思います。しかし、このネットワーク(連携)とは、組織等が出来れば起動するわけではなく、職員一人一人が顔を合わせ、関係性を持つことで初めて起動します。

 個別の課題に対しては、必要に応じて、その課題に関係する職員が集まって具体的な検討を行う、ケア会議を行うことが必要です。ケア会議には当事者にも参加してもらうことは必要ですが、課題整理の段階では多様な手法が必要な場合もあります。そして、ケア会議を手軽に開くためにも様々な地域の課題解決に参加している職員が集まり、支援のあり方、地域状況の把握・評価、不足しているサービスの検討等を行い、関係性を深めておくことが重要となります。また、この会議の組織化にあたっては、参加職員の属する機関の理解が必要であることから、その機関の代表者に参加していただく会議の開催も意識を高めるには重要となります。なお、地域にこの会議が根付くまで、相談支援事業を委託している機関と行政機関が共催で行うことにより円滑な実施を図ることが出来ると考えます。なお、決して忘れてはいけないのが、関係者で情報を共有する前提には、当事者の了解が必要で、個人情報の保護には充分配慮する必要があります。

 横浜市は、現在、この考え方を「横浜市障害者プラン -相談支援システムの体制整備-」として掲げ、推進しています。

 さて、この相談支援事業は、今回のグランドデザイン案においても非常に重要な役割を担うとされていますが、介護保険制度のように仕組みが明確にならずに、必要性のみが言われているように思います。支援費制度では、財源についても一般財源化(*1)され、都道府県、市町村によって既にかなりなばらつきが生じている状況があります。今後、市町村が主体的に障害福祉施策を担うためにも、相談支援体制の構築が非常に重要となることは間違いありません。是非、真剣に考えるべきです。

横浜市の相談支援体制(身体障害・知的障害)

*1について

 この一般財源化は、現在進められている「三位一体改革」と同様ですが、市町村にとってどのような影響があるかという観点で、市町村の内部事情について説明したいと思います。まず、一般財源化されると、当該事業に関する費用やその積算根拠(1事業あたりの単価)が明示されない状況となります。国が地方自治体に交付する地方交付税は、グロスで金額を算定しますので、理屈としては「相談支援事業」という個々の事業も財源に含まれるのですが、個々の事業に関する積算根拠が明示されなくなるために、市町村の障害福祉担当部署は、財政当局との駆け引きにおいて、個々の事業費を死守することが困難になります(財源不足の状況下においては一律に縮小を求められてしまいます)。経済状況が良いのであれば、補助金方式における国単価(1事業所に支払う単価)以上の事業費を設定することも無いとは言えませんが、現在の財政状況においては難しいと言わざるを得ないと思います。したがって、一般財源化は、その市町村に個々の事業に関する財源が入っているのかどうかといったことや、入っているようでも幾らぐらい入っているのかといったことが不明確であるため、市町村の考え方によっては、事業費の単価が変更(削減)可能であります。そもそも、事業を実施するかしないかは市町村の判断ということになるのです。

4.そしてこれから  ~グランドデザイン案が目指すは介護保険制度・・・~

 さて、このコラムの執筆依頼を受けてから随分と経ってしまいました。当初は、市町村で障害福祉を担当する立場として、支援費制度の状況をベースに障害福祉施策における介護保険制度の活用について記載する予定でした。しかし、「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」が示され、がらりと様相が変わってしまいました。そのため、当初の予定を変更して、全面的にグランドデザイン案をどのように考えるのかをお伝えしたいとも思いましたが、様々な議論がされ、徐々に考え方が示されている最中でもありますので、それは次の機会に譲ることとし、本稿では、市町村に与える影響という観点でグランドデザイン案の内容に触れていくことにします。今後の動向における参考になれば幸いです。
なお、このグランドデザイン案は、厚生労働省により、平成16年10月12日の社会保障審議会・障害者部会で提示され、その後、10月15日、11月12日、11月26日、12月14日、12月27日の部会により議論が行われています。1か月に2回の部会を開催するという状況でありますが、議論は尽きていません。特に12月14日に示された、利用者負担額の考え方では、委員の方から相当厳しい意見が出されています。そのような状況から、グランドデザイン案がこのままどのような内容で確定するのか見えない状況であると思えます。

 既に示されている「制度改正のスケジュール(中長期案)」から業務を考えてみました。

1 障害者計画策定

○ 平成18年度予算を策定する基礎数値については、平成17年度春に得て策定することを考えると、障害者計画から基礎数値を得ることは不可能です。したがって、現行サービス実績から求めざる得なくなります。しかし、現行サービスとグランドデザイン案のサービスが異なることから、平成16年度末において障害者1人1人が利用している公的サービスを洗い出し、グランドデザイン案の事業を推計することになると思います。横浜市においては、9,000件近いレコードを洗い出すことになり、早期にデータ作成の整備に着手する必要が生じます。

○ 障害者自立支援給付法(仮称)によれば、障害者基本法の改正により、全ての市町村に義務付けられた障害者計画は平成19年4月施行となっていますが、平成17年度時点では各市町村においては策定されていません。仮に策定されていたとしても、事業量を、市町村から都道府県、都道府県から国全体の事業量として積み上げるためには、具体的数値とする事業内容や数値の見込み方が国の考え方と一致している必要があります。また、その数値は、ニーズ調査結果を用いるのか、過去の推移で良いのか等の考え方が一致していなければ、有意性の無い数値になってしまいます。

○ 新たに障害者計画を平成18年度末までに策定する場合でも、平成17年度早期に計画の詳細が示されなくては策定が難しくなります。計画の策定は、当事者の参加が必要であり、障害者施策推進協議会等で議論し、広く市民にパブリックコメントを実施し意見を頂いた後に、計画を確定することとなります。したがって、この計画の基礎数値のデータとしてニーズが必要となれば平成17年度に調査の実施が必要となります。しかも、調査結果の分析等の時間を考慮すると、調査に必要な詳細内容は平成17年度当初に明らかにされている必要があると考えます。因みに、平成17年度に調査を実施するにしても、年度当初の予算化は困難な状況であります。

2 障害程度区分・審査会・支給決定

○ 障害程度区分については、「新障害程度区分」を暫定的に決めたあと「新々障害程度区分」を同時に検討し、平成21年度から本格的に実施したいと考えています。「新障害程度区分」については、今年度夏に実施した介護保険の要介護認定基準による障害者への調査を受けて、この介護保険の要介護認定基準にプラスαした基準になることが、時間的にも考えられます。そして、この「新障害程度区分」は、サービス利用者全員を判定し、各サービスごとに障害程度別の単価が設定されることになると思います。なお、ホームヘルプは、障害程度区分による単価の違いは今と同様に無いものと思われますが、障害程度区分に見合う提供時間算出に関する尺度が示されるのではないかと考えます。

○ 審査会については、平成17年度中に設置することとなっています。市町村の規模によっては、介護保険の審査会と共有したいとの考えもあると思います。しかし、複数のサービス利用者や量的に多くのサービスを必要とする人に対してはサービス利用計画に対する意見を付すとしていることや、審査内容が障害程度区分やサービス内容であり介護保険のそれとは異なることから、介護保険の審査会とは別に実施することが必要と思います。なお、審査の基準となる“支援の必要度に関する尺度の開発”(概要版7頁)の内容については、今後詳細な見解が示されると思いますが、様々な議論がされることになると思います。

○ 支給決定については、次節「3 新施設体系・新事業体系」に記載しましたが、相談支援事業のあり方を各市町村がどのように考えるか、また、進めるかによって、措置制度や支援費制度と違った決定経過になると思います。しかし、「自立支援計画」の策定費として支援計画策定費を給付することが示されており、この給付対象が、市町村から相談支援事業を委託されている機関と考えられることから、介護保険制度に非常に近い形でケアマネジメントが制度化されることを想定しておく必要があると考えます。

 現状では、ケアマネジメントを実施する職員の資格を、ケアマネジメント研修修了者としているのみで、特定の資格を示していませんが、決定の透明性が求められている昨今の状況を考慮すると、今後、介護支援専門員の資格の上に、障害者ケアマネジメント研修履修義務が課せられることは充分考えられます。

3 新施設体系・新事業体系

○ 入所施設について、居住機能と日中活動機能に分化するとしています。わかりやすく言えば、今は、昼・夜の経費として1か月数十万円支払っているのを、居住機能の経費としていくら、日中活動機能の経費としていくら、と昼夜を別々に支払うことが可能になります。これは、入所施設利用者が地域の日中活動に参加しやすくなり、自然と地域生活の情報が入り、入所施設利用者の地域移行が進むことを考えたものと思えます。しかし、事業を運営する側の視点で考えると、入所施設利用者は、昼夜の一貫した支援が必要であるから入所しているのであり、昼夜の支援を切り離すことは考えにくく、また、事業経費を確保するという目的から、日中活動についても施設で実施している事業の利用を計画することが想定できます。

○ 通所施設の多機能化については、同一施設内で様々な事業(個々の事業によって違った単価)を行うことになり、利用者の参加する事業によって経費が違うということは、事業者の事務的対応が複雑化することは避けられず、新たなシステムの導入を行う必要が発生します。

○ 他にも事業の変更については、グループホームがグループホーム(*2)と介護を必要とする人のケアホームとに役割を分けることや、ガイドヘルプ事業が市町村基本事業となっていますが、日常生活支援対象者は日常生活支援に外出介護も含むことや、重度の知的障害者や精神障害者は行動援護にするなど、様々な内容が提示されています。

*2について
厚生労働省が10月12日に提示した【参考資料】35頁に記載されている「表.給付等体系と事業体系の関係」の「居住支援(上記に付随)については、グループホームの該当者を限定するかのような記載となっていますが、限定するものではないとの情報もあります。

○ 事業・施策の旧体系から新体系への移行については、平成18年度から概ね5か年間で実施するとしています。移行の方法としては、事業ごとでも地域ごとでも考えられるとの見解があるようですが、措置制度から支援費制度に移行したときのことを考えると、ある時期に一斉に実施することになると思われます。

 事業・施策の変更は、利用者のサービス決定、事業者の契約や請求、市町村の審査および支払に関する事務を考えると、支援費制度より複雑になると思える制度であり、システム化が絶対必要となります。しかし、すぐにシステム化してしまうと、新旧2種類のシステムを同時並行で運用することになり、事務処理の混乱を避けるためにも現実的ではありません。よって、新システムの導入は、厚生労働省より示されているスケジュールの「審査・支払いシステム設計」が開発・施行される平成19年度以降と考えるべきでしょう。

5.おわりに

 このコラムをご覧いただいた方には、「特集:2005年介護保険法改正」とはかけ離れた内容とのご批判もあるかと思います。しかし、グランドデザイン案に示された変更内容を見れば、障害福祉施策を介護保険制度とほぼ同じ仕組みにしようとしていることは明らかです。ほぼ同じ仕組みになった結果として、施策・事業の詳細に、障害の個別性が組み込まれているかどうかということや、結論に至るまでにどのような議論がされたのかが重要な意味を持つと考えます。保険制度として障害福祉施策を実施していくかは、将来の議論となってしまったようですが、少なからず、介護保険制度を将来的にも意識していく必要があるということでご理解いただければと思います。

岡ノ谷 雅之(おかのや まさゆき)

横浜市福祉局障害福祉課計画係長

【経歴】

  • 昭和55年 横浜市役所入庁
  • 平成元年~4年  民生局障害援護課(現 福祉局障害福祉課) 在宅サービス(地域作業所、地域訓練会、地域活動ホーム等)事業を担当
  • 平成14年~16年 福祉局障害福祉課制度担当係長 支援費制度、障害者プラン等を担当
  • 平成16年~ 福祉局障害福祉課計画係長