地域包括支援センターの課題と対応~丸投げ委託と無気力直営~

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1.地域包括支援センターと指定介護予防事業者との関係

 地域包括支援センターの今日の混乱は、かつての在宅介護支援センターの混乱と等しい。「地域包括支援センターは、介護予防のマネジメントに引きずられ、あたかも介護予防センター化している。」「本来の行うべき相談支援に対応できない」が多くの声である。これは、かつての在宅介護支援センターが、居宅支援事業所の2枚看板でケアマネジメント業務に引きずられた構造とまったく同じ状況である。
 しかし、そうなったのは地域包括支援センターの責任ではない。責任は、業務の主体である市町村にあり、あわせて制度の問題でもあるのだ。

 介護保険法の改正によって、法115条の38に地域支援事業が位置付けられた。おもな業務内容は、第1項第1号には要介護状態にならないような予防又は要介護状態の軽減若しくは悪化の防止のための必要な事業、第2号に包括的効率的な援助、第3号に生活実態その他実情の把握、保健医療、公衆衛生、社会福祉その他の総合的な情報の提供及保健医療の向上及び福祉の増進を図るが位置づけられている。さらに、第4号に包括的かつ継続的な支援を行うと規定している。

 問題は、第1項第1号には要介護状態にならないような予防又は要介護状態の軽減若しくは悪化の防止のための必要な事業は、地域支援事業の予算の枠組みの中の委託事業として位置づけられており、当然ながら指定介護予防支援事業を指してはいない。地域包括支援センターの業務としては、地域支援事業における包括的支援事業であり、その財源は委託料である。

地域包括支援センター(地域包括ケアシステム)のイメージ図

 115条39に基づく改正によって制度化された地域包括支援センターは、第2項に市町村が設置できる。第3項には老人介護支援センターの設置者等に委託できるとしており、設置にかかる届出は、施行規則140条の51に基づき、市長に必要事業を届け出るものであり、規則140条の52第2号に、保健師その他これに準ずる者、社会福祉士その他これに準ずる者、主任介護支援専門員その他これに準ずる者をそれぞれ1名常勤として配置しなければならないとした。

2.地域包括支援センターの機能

 委託により従来の在宅介護支援センターを発展させ、地域包括支援センターとすることができる構造としたのである。したがって、地域支援事業のうち包括的支援事業等を実施し、地域住民の心身健康保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援する施設であると位置づけ、それが委託であれ、直営であれ、地域包括支援センターが行う業務となった。

 さらに、地域包括支援センターが指定を受けることができるのが、法115条の20に基づく指定介護予防事業者である。法58条では、指定介護予防事業者は地域包括支援センターの設置者が、当該市町村長に対して申請をおこない指定を受けるものと規定しており、これに基づき、介護予防サービス計画費を受給することができるのである。この指定介護予防支援事業者の必要最低人員は1名以上であるが、地域包括支援センター職員等と兼務して差し支えないこととなっているため、ほとんどの事業者が、便宜的に包括支援センターの3名を指定介護予防支援事業者の職員として兼務させている構造である。

 ここに、地域包括支援センターが介護予防マネジメント業務を実施しているとの誤解が生じた原因がある。厳密に言えば、介護予防のマネジメントは、指定介護予防支援事業所が行うのであって、地域包括支援センター固有の業務ではない。従来の在宅介護支援センターと居宅支援事業所の関係のように、委託事業と指定事業に分かれるのである。

 その委託事業部分は、委託者である市町村が地域ケアの視点に立って、地域に住む高齢者等を支えるものであり、この機能が実現するためには市町村が責任主体として、仔細に指示・指導しない限り、3職種揃えたとしても地域包括支援センターは生きたものとはならない。地域にいる一人暮らし高齢者や虐待を受けている恐れのある者の支援、成年後見制度やアルコール依存症等医療依存度の高い者、認知症高齢者で保護ざれ居所や名前がわからない者などの生活支援、相談・支援は、地域福祉の基本である。そのために委託者としての自治体が、あらかじめ民生委員や自治会・町内会、ボランティア、地域包括支援センターなどのネットワークを通じて、地域に一人暮らしや高齢者世帯といった要援護者の調査を行い、そのデータをコンピュータによるデータベース化し、地域包括支援センターとの情報共有システムを構築しておく必要がある。これによって、夜中の虐待対応や土日・休日の認知症高齢者の保護に対応できるのである。さらに、事前に情報をつかみ地域でのみまもりなどの地域支援を現実のものとするためには、信頼関係が築かれた地域ケア会議など、ネットワーク体制の整備は言うまでも無く、虐待防止ややむを得ない措置にかかる行政側の支援体制の整備、成年後見制度の市長申し立てにかかるマニュアルの作成など、地域ケアにかかる行政側の体制整備が行われていなければ、地域包括支援センターに地域支援を委託しただけでは効果を生まないのである。それは、明らかに委託する市町村の責任であるのだ。

 このような地域にある課題を木目細やかに対応するためには、行政のリーダーシップと体制の整備が必要なのである。それが最終的に地域包括支援センターの数を決めるものになるのである。
 その意味では、地域で信頼される地域ケアの仕組みをつくるには、厚生労働省が示すとおり高齢者人口6000人が妥当なラインであると言えよう。包括的な支援とは、介護予防プランや生活支援を含めた地域の高齢者の総合相談・支援である。

 その意味では、地域包括支援センターでの訪問相談・対応は、高齢者が6000人とすれば、1%弱の少なくとも月50件は対応することとなる。あわせて、介護予防にかかる事業や相談支援等で月2件、認知症の対応は、各地区で月5件は求められる。これら委託業務に含めて、事業者としての指定介護予防支援事業所として、6000人の15%の認定者の3割が要支援者という実態から、270人が要支援者となり、その内の7割が、介護予防プランの作成が必要なるとけ計算すれば、1地域包括支援センターで190という数になり、それを3職種で均等に割ると、一人当たり60件から70件程度の介護予防マネジメントを行うことになる。

 ただし、これはかなり地域に信頼された、地域包括支援センターであろう。信頼が無ければ、それぞれの相談件数は少なくなるし、信頼を得られれば相談件数は伸びてくるのである。地域に信頼されず、相談が総合少ないのは委託契約の方であるから、必然的に指定介護予防事業者の業務が中心となるという構図である。これが、冒頭触れた在宅介護支援センター の構造と同じの意味である。

 したがって、地域包括支援センターは、総合相談とケアマネジャー等に対する困難事例継続支援、介護予防マネジメントを包括的に行う必然性があって、1ヶ所の地域包括支援センターと在宅介護支援センターを設置する方法や6000人を越えた圏域に1ヶ所地域包括支援センターを設置し、そこに保健師や社会福祉士など集められる範囲の職員を配置し、お茶を濁すのは自治体の地域ケアとしては、適当な姿とはいえないのである。

3.地域包括支援センターの設置数

 あわせて、問題を複雑にしているのが、地域包括支援センターの数を決定する際の設置数である。地域包括支援センターは地域支援事業であるため、財源は介護保険、国、都道府県、市町村で応分負担する制度であり、介護保険法施行令第37条の2では、各年度の介護給付等に要する給付の予想額に対して、3%の上限が設定されている。さらに経過措置として17年度は給付の2%、18年度は2.3%の上限が定められており、地域包括支援センターの設置数を構想する際の足かせになっているのも事実である。さらに、各市町村においては、地方財政の悪化に加え、三位一体改革によって補助金の縮減、地方交付税の算定見直し、税源委譲となどにあわせて、この後の少子高齢化の影響等から組織および人員については、縮小基調となっており、総務・財政サイドからの強烈な締め付けに耐えうるかが一つのポイントなっている。

 また、今回の改正に関連して、保健事業実施要領の一部改正が行われ、従来の老人保健法に基づく、健康教育、健康相談、機能訓練、訪問指導の4事業の対象年齢が40歳から64歳となり、基本健康診査と健康手帳の交付を除いて、地域支援事業介護予防事業としての位置づけとなり、事実上65歳以上の老人保健事業が制度から消滅した。そこで、その業務を担っていた保健師等の異動が容易になり、地域包括支援センターの業務を行う保健師として位置づけたところも少なくは無い。これが、直営地域包括支援センターの一つの構図である。

 現実に、埼玉県内146地域包括支援センターのうち、約7割にセンターが直営で市町に1地域包括支援センターがあるのみである。

4.直営地域包括支援センターの課題

 厚生労働省は、単純に地域ケアから引いた自治体を改めて引き出すべく直営を進めたが、直営事業者にするには大変複雑な手続きをこなさなければならない。

 まずは、直営事業の場合、地域包括支援センターは事業勘定を二つ作らなくてはならないこと。

 一つは、委託でも必要なのだが、地域包括支援センター委託事業勘定。もう一つが、指定介護予防支援事業勘定である。

 地域支援事業は、介護保険特別会計の中に設定される科目であるから、人件費等も当然地域包括支援センター委託事業勘定から支弁される。ここでは、はっきりと会計を分ける必要がある。
 特に地域支援事業で行うものは、総務費のように大括りな財政運営は許されず、2%のうちしかも介護予防事業として上限1.5%の枠組みでの運営が求められており、金の流れをいつでも、わかるようにしておかなければならない。

 あわせて、指定介護予防支援事業は指定事業であるため、これを行政組織の中で行うとすれば、事務分掌規則に盛り込むことや職員は位置づけについては、いわば行政組織と離れて、業務を行うため、労働条件の変更にあたり組合協議を必要とする。

 さらに、指定介護予防支援事業所は、要支援の人のケアマネジメント業務を行うこととなる。マネジメントであれば、当然24時間いつ何時、利用者からの依頼がくるかわからない状態であるため、行政の一般的な就業時間である8時半から17時までとはいかない。この就業時間の規定をどう整理するのかも、大きな課題となる。事実、夜中に虐待や認知症で徘徊した高齢者の保護等を行うことは珍しいことではない。これらの業務を実施した場合、予算上は介護保険特別会計の地域支援事業の地域包括支援センター事業勘定なのか指定事業者勘定なのかを業務によって区分けする必要がある。業務の内容によって、時間外手当の支出科目も異なるからである。

 これらの法構造を理解し、法定化する必要があり、これらを整理しておかないと、業務に対する何の指示もしない「安易な丸投げ委託」や体制だけを整えただけの「無気力な直営」となってしまうのである。
 厚生労働省は介護保険の創設によって引いた自治体における地域ケア体制を改めて整備する目的で、地域包括支援センターの業務主体は市町村とした。したがって、地域包括支援センターの整備は、市町村が地域ケアの必要性に応じて政策構想を練っていく必要がある。その結果、直営か委託による地域包括支援センターを選択し、整備することになるか、最も練られた政策は、行政としての地域ケアの受け皿を整備し、定期的な会議等による実態の掌握をすすめ、すべての業務の報告ならびに相談・支援等を実施する委託による地域包括支援センターの整備ではないか。

5.地域包括支援センターは何をすべきか

 いずれにしても、このような状況の中で改めて地域包括支援センターは何をすべきかを問えば、地域に生活する何らかの支援を必要とする高齢者等の総合的な相談・支援である。前述に示したような認知症や虐待などの困難ケースの支援である。福祉・医療・経済・人間関係さらに生きがいなどその人の生活を包括的に支えるための相談・調整・支援である。結果としてそれらが、介護の予防につながるのである。これは、平成12年度までの福祉制度から介護保険制度に変わった際に、多くの自治体で、ケアマネジャーに押し付けて、市町村が一斉に手をひいた領域でもある。この高齢者福祉行政を改めて、自治体の責任として問い直したのが、地域包括支援センターであるが、これまでの説明のとおり新たな課題ではなく、これまでも在宅介護支援センターに課せられていた重要な役割であったはずだ。自治体の責任として存在していた問題領域であるにもかかわらず、市町村が在宅介護支援センターの業務について、明確に指示せず最後まで腰が引けたままであったので、地域のネットワークすら無かったのである。

 しかし、今回の改正によって、地域包括支援センターが構想され、改めて、地域の課題を地域包括支援センターで解消し、さらに、新たに課せられた効果を生むためには、地域包括支援センターが普段から地域とのかかわりを持っていなければならないし、信頼を得ていなければならない。信頼に耐えうる相談・支援すべき体制が整っていなければならないのである。民生委員や自治会・町内会など地域の高齢者とかかわりのある人々と良好な関係を築き、それが地域の福祉コミュニティとしてネットワーク化する必要があるのは言うまでもない。
 今回の改正によって、地域包括支援センターを設置せよという要請によって、はじめて地域ケアの構築に着手するとすれば、大変大きな労苦を覚悟しなければならない。なぜならば、これまでやってこなかった地域ケア領域を、制度だから形を整えても、中身が伴わないからであり、この地域ケアは、信頼を生むまでにある程度の時間を要するからである。これらを進めるためには、自治体において、あらためて地域ケアを構想するための全市民的合意が必要であろう。

 地域包括支援センターを基軸とした地域ケア体制の整備は地域にとって必要な課題であり、それは住民が安心して暮らすためのツールである。今回の改正に対して、いかに地域に向き合い、地域を良くしていくのか、まさに今自治体が問われているのである。

鏡 諭(かがみ さとし) 

鏡 諭(かがみ さとし)

所沢市保健福祉部高齢者支援課 課長

【経歴】

  • 1954年山形県生まれ
  • 1977年所沢市役所入庁
  • 1977総務部庶務課、1994高齢者福祉課、1999介護福祉課
  • 2000高齢者いきがい課 2006高齢者支援課現職

【主な著作・論文】

≪単著≫
『自治体現場から見た介護保険』 東京法規出版刊2001年発行

≪代表編集≫
『わかりやすい介護保険法の手引』 介護保険法令研究会編 新日本法規出版刊 2002年発行

≪編著≫
『介護保険なんでも質問室』きょうせい刊 2002年発行
『介護予防のそこが知りたい』ぎょうせい刊 2005年発行

≪共著≫
『高齢者の権利擁護』 高齢者福祉・権利擁護研究会編 第一法規出版刊 2001年発行
『高齢者介護手続マニュアル』 高齢者介護手続研究会編 2000年発行
『コミュニティ行政の再出発』「自治体の先端行政」 松下圭一編学陽書房刊所収 1986年発行

ほか多数